仕事で文書を作成したり、外国語の文書を翻訳するといった機会には、やはり辞書は欠かせないモノだろう。昔は分厚い紙の束だった辞書も今日ではさまざまカタチに変貌している。ウェブ上には無数の辞書サイトがあり、文書をまるごと翻訳してくれるソフト・サービスや、ATOKなどのように日本語入力システムに辞書を組みこんだものもある。
それぞれ一長一短あるのだが、言葉(単語)の意味を手軽にすばやく知りたいときには、ポップアップ型辞書ソフトと呼ばれる類が便利だ。
ポップアップ型辞書、定番中の定番「Babylon」
この手のもので、定番中の定番ともいえるのが「Babylon」だ。現時点の最新バージョンは「8」で、これまでの登録ユーザーが2200万人を越えるという。
すでにご存知のかたも少なくないだろうが、念のためにBabylonの仕組みを説明しよう。このソフトはネットがHDDのように使えるという意味で「クラウドサービス」のはしりである。
ウェブの文章などの調べたい単語の上にマウスポインタを合わせ、任意のキー(カスタマイズ可能)と右クリックを押す。するとBabylonの画面がポップアップで起動し、単語を読み取り、オンラインでBabylonのデータベース内の28言語、1000を超える辞書から瞬時に検索、意味を表示する。たとえば、「外国語の文書を翻訳する」という文章の「翻訳」をクリックすると、「翻訳」の和英、Wikipedia(日本語)での意味、「翻」の中日、中英の意味がまとめて表示される。
語尾変化やイディオムなどにも対応する。「went」を調べると、ちゃんと「go」の意味が表示されるのだ。
IEやFirefoxなどのブラウザのほか、PDFファイルやマイクロソフトのオフィスソフトなど、多くのアプリケーション上で使用可能だ。ただし、なぜか読み取れずに苦戦する場合も少なくない。
便利で使いでのあるソフトなのだが、難点を挙げるとすれば8889円というお値段だろうか。デビュー当時はフリーソフトだったのだが、バージョンが上がる度に値段も急上昇といった印象だ。また過去にはユーザーのライセンス情報などを無断で送信したため、一種のスパイウェアではないかと警戒されたこともある。サポート体制についても、ネット上では不満というより怨嗟の声がたびたび聞かれる。
無料ソフト「Lingoes」や「キングソフト」も侮れない
Babylonよりも、もっと気軽に使えるソフトはないだろうか。Babylonの独占状態とみられるこのジャンルだが、じつは最近になって有力な挑戦者がいくつか登場してきた。
80言語に対応と謳う無料ソフトの「Lingoes」。Babylonがオンラインで辞書を検索できるのに対して、こちらは基本的に辞書ファイルをダウンロードして使うことになる。機能的にはBabylonを強く意識しているようで、合成音声による発音機能、文章翻訳、通貨変換、単位変換などBabylonにある機能はほぼ確保し、カスタマイズ性などでは上回っている部分すらある。
著名な英英辞典などを含めて400以上の辞書がダウンロードできるが、公開されている辞書について権利関係が不透明ではないかとの指摘もある。
今春には無料セキュリティソフトで知られるキングソフトも無料辞書に参入した。「キングソフト辞書」はあらかじめ、英和、和英、国語の7つの辞書がセットになっていて、追加や変更はいまのところできない。ユーザーインターフェイスは少々無骨で上の2つにやや見劣りがするが、動作は軽快で、カーソルを単語に合わせただけで起動(キーボードとの組み合わせも可能)する「マウスオン辞書」となっている。
細かくみていくと、ポップアップ辞書も一長一短の感はあるが、自分の用途にあった辞書を1本インストールしておけば、仕事の能率も上がりこそすれ、下がらないことは請け合いである。
虎古田