仕事柄、タクシーに乗ることがよくあります。
タクシーのドライバーさんは、何しろ街のなかそのものが仕事場ですから、ファッションや季節の移り変わりなど人々の生活について鋭く観察されています。
「ケータイしながら平気で交差点に突っ込んでくる」
最近、ドライバーさんと話していて多いのが、ケータイに関する話題です。
「一時期は減っていたんだけど、最近、自転車や自動車の『ケータイしながら運転』が増えていてね。ヒヤッとすることや、ちょっとした貰い事故なんて、もうしょっちゅうですよ」
こんなふうにボヤくドライバーさんが目につくようになりました。自転車については若い人、自動車は女性や高齢者に対するクレームを聞くことが多いです。
「あちこちでエコ、エコ言ってる影響なんでしょうかねぇ。自転車通勤、通学が増えるのは環境にもいいんだろうけど、ケータイで話しながら、ともすればメールを打ちながら運転してるんですよねぇ」
10メートル、15メートル先の信号が青から赤へ点滅していても、ケータイしながらの自転車は平気で交差点に突っ込んでくる。
坂になっている交差点や合流地点だと、スピードを落とさないどころか、前も見ずにケータイ片手に進入してくる。
交差点の直前で、歩道から車道へ急に進路変更してくるなんてのは当たり前で、ややもすれば、自転車レーンから後ろも見ずに右折しようとすることすらあるのだとか。
いまや、ドライバーさんたちにとっては、自転車を見たら「ケータイしながら」かどうかを確認するのが基本動作になっているそうです。
「それでこすった、ぶつかったとなって、法的に悪いのは自動車で職業運転手のこっちなんだから、嫌んなっちゃうよ。自転車の連中、こっちを睨んでくるんだけど、本当に悪いのは交通法規を守ってないそっちだろうが、って言ってやりたいんだけどね。立場、弱いんですよね」
自転車専用レーンが極端に少ない「都市計画上の問題」も
こうした自転車へのクレームは、東京だけでなく、都市部でフツーに聞かれることだったりします。
たしかに、自転車専用レーンが極端に少ない、歩道も車道も狭く自転車の通行が難しいといった日本の都市が抱える都市計画上の問題もあります。これが一朝一夕では解決しないというのは、担当しているラジオ番組でも何度か取り上げて知っています。
しかし、それとマナーとはまた別の話。
ケータイの「ながら運転」が危険で非常識な行為であることは論を待ちません。
次回は、自動車のケータイ「ながら運転」について、もう少しタクシードライバーさんたちの話を聞いてみます。
井上トシユキ