仕事で大容量のファイルを相手に渡すといった機会に、みなさんはどんな方法をお使いだろうか。
一昔前ならバイク便を飛ばしたかもしれないが、このクラウドコンピューティング時代には、ネットのメールやFTP、あるいはアップローダーやオンライン・ストレージを使う選択肢が有力だろう。ストレージサービスは、時にメールやFTPより便利な場合もあり、筆者もたまに使用している。が、ビジネスに使えるストレージをコラムでいくつか紹介せよと言われたら、少々考えてしまう。
運営主体がハッキリせず、セキュリティ面に不安があったり、しばらく見ない間に大幅改変、改悪されていた、消えていたなんてこともあるからだ。
大阪ガスグループが運営する無料サービス
そんなところで、今回はファイル受け渡しの「定番」ともいえる「宅ふぁいる便」に注目してみたい。この無料サービスは「クラウド」以前からの長い実績があり、素性が定かなのだ。
1999年、大阪ガスが開始し、現在は大阪ガスグループのエルネットに移管されている。もともと大阪ガスの社員が外部の取引先とデータ交換を安全かつ簡単に行う目的で開発され、後に一般公開されたという。
では、実際にどう使うのだろうか。誰かにファイルを送るとすると、「宅ふぁいる便」サイト上でアップロードするファイルを指定し、送りたい相手のメールアドレスを記入、実行する。と、ファイルは宅ふぁいる便のサーバにアップされ、相手方にはメールで「ファイル預かりのご連絡」が届く。そこに記載されたURLにアクセスしてファイルをダウンロードする仕組みだ。
公式サイトでは「グリーティングカード方式」と説明されているが、この方法だとファイルが送られたこと、またダウンロード用のURLも相手のメールに記されるだけなので、一定の機密性が保たれる。また相手へのメール送信、ダウンロードの実行をメールで知らせてくれる機能がある。
ファイル送信には無料の会員登録が必要で、広告を含むメールマガジンの受け取りが必須である。一度に送れるのはファイル10個、100MBまで。アップロード、ダウンロードの速度は驚くほど速くもないが、そう遅いとも感じない。
データを預けるときは慎重に
いまではネットのグリーティングカードは何も珍しくない。それと同じように、このサービスにもとくに目を引くようなところはないようだ。新奇なサービスや便利な機能、高スペックが好きな筆者には不満なほどシンプルである。
だが、ストレージ、それもビジネス用途で、となれば、そこで大事なのはわかりやすい便利さや機能よりも、セキュリティや安定性、実績のほうだ。そもそも機密情報などにストレージを使うのは不適当だろうが、いかなるレベルのものであれ、業務関係のデータをネット上に保存するときは慎重に構える必要がある。それこそ銀行にカネを預けるつもりでサービスを選んでも、そう大げさな話ではないだろう。
虎古田