ジャーナリズムの「プロ」はどんな仕事をすべきなのか?
今回の研究発表を「Twitter中継」した敬和学園大学の一戸信哉准教授に、感想を聞いた。
「今日のセッションでは、情報通信学会という既存メディアの関係者も多い学会で、今のネットの実態を踏まえた刺激的な問題提起がありました。
そこでは、(1)ジャーナリズムを担う組織を今後社会はどのように維持するのか (2)誰でもジャーナリストを名乗って発信できるようになった今、プロはどんな仕事をすべきなのか、という二点があぶりだされたように思います。
1については、NPOモデルやネット経由の少額課金など、米国で議論されている『新聞社をどうやって残せるのか』という議論に学ぶところが多いと思います。が、その場合でも、日本語圏の規模で同様にビジネスが成り立ちうるのかが問題になるでしょう。
2については、若手はネットに頼ってしまって質が落ち、中堅以上はネットのことがわからずに判断をあやまるという、新聞業界の現状についての指摘がありました。この点については、ネットの『うねり』とどうつきあい、どう対話するのかというポリシーがカギになるでしょう。『対話』をどのようにするかについては、たとえば、Twitterでの@asahiの取り組みが、試行錯誤の表れといえそうです。
記者がネットでネタを拾ったとしても、それを構成して記事に仕立て上げるところでプロがプロの能力を発揮することにより、プロアマのすみ分けはできるように思います。またそれだけのノウハウも蓄積されているはずです。もちろん、新聞がネットの後追いをしていることを隠すのは論外ですが。
一方、一般の個人が現場で、『にわかジャーナリスト』になってしまう問題もあります。アマチュアが現場にいあわせて、偶然撮影して発信してしまうという問題は、今日のセッションではそれほどクローズアップされませんでしたが、実はもっとも解決が難しい問題と思います。
送り手と受け手という二分法が崩れた後の、『メディアの多重化』(遠藤先生)の中で、これから何が問題になるか、多様な論点があぶりだされたように思います」