その6「ミクシィでやる意味があるか徹底的に考える」
――ミクシィ企画部長・岨中(そわなか)健太氏
「ミクシィのミッションは、コミュニケーションを進化させて、人々の生活を豊かにすること。ウェブサービスを作るというよりも、コミュニケーションを非常に大事にしている。新しい機能を追加するとき、機能的な側面だけ見るのではなく、コミュニケーションがいかに発生するか、いかに楽しいかということを重視している。
今回は『ミクシィ年賀状』を例にして、ミクシィにおけるコミュニケーション課金の話をしたい。コミュニケーション課金とは、コミュニケーションのなかでどのようにお金をはらってもらうか、どのようにマネタイズしていくかということ。
サービスを検討するうえで重視しているのは、一言でいえば、『ミクシィでやる意味があるか』ということ。すなわち、(1)ユーザーが楽しいか、便利と感じるか(2)強みを生かせているかどうか(3)事業者目線になりすぎていないかどうかの3つが重要と考えている。基本的にユーザー中心に考えるようにしている。
『ミクシィ年賀状』でいうと、ミクシィのソーシャルグラフ(人と人との関係をしめす相関図)を生かすことで、住所を知らなくても年賀状を送れるようになり、いままでにないコミュニケーションサービスを提供できる。つまり、強みを生かせる。
また、最近は年賀のあいさつを電話やメールですます人が多くなっているが、調べてみると、80%の人がハガキでもらいたいと思っていることがわかった。また、ユーザーの動向をみると、1年で一番多く日記の投稿があるのは年末年始。ユーザーにも年賀状サービスは喜ばれると考えられた。
つまり『ミクシィ年賀状』は、コミュニケーションを進化させ、いままでにない体験を提供でき、強み(ソーシャルグラフ)を生かすことができる。市場のニーズとサービスの本質が合っており、多くの点でミクシィの方向性と合致していた。
だが、先進性や便利さだけではマスをつかめないので、使ってもらうきっかけを作るための仕掛けを考えた。たとえば、400種類以上のテンプレートを用意し、新聞や雑誌での露出が増えるようにして認知度を上げる工夫をした。価格面も48円からという買いやすい設定にしたり、年賀状2枚につき1本の植樹につながるというエコの要素を取り入れて、きっかけをあたえた。便利さだけでなく、面白さや買いやすさ、エンタメ性も加えた。
ミクシィは基本的にコミュニケーションをデザインしていこうというスタンス。まずユーザーに楽しんでもらい、そのなかで売れるサービスを作っていくという考えだ」