その4「つくったものは無駄にならない。あとからでもマネタイズできる」
――面白法人カヤック企画部クリエイター・玉田雄以氏
「カヤックは、鎌倉にあるウェブの制作会社。『つくる人を増やす』というのが経営理念で、アイデアと発想力を重視したサービスをつくっている。
新サービスの制作期間は短いもので1日で、長くても1ヶ月ぐらい。新規事業開発チームの年間サービス作成数は、07年が77サービスで、08年が88サービス。09年は99サービスを作るのがミッション。3日に1個ぐらいの計算なので、あまり時間はかけられない。
なにが当たるか分からないから、作ったら放置して次の制作に入る。でも放置しているだけでは収益にならないので、作って放置してからマネタイズを考える。マネタイズの方法は3つある。
1つ目は、人気が出たものを伸ばす。放置していたものが盛り上がってきたら、どう伸ばすか考えて、ユーザーの声を取り入れながら拡張と改修を繰り返す。サービスにユーザーがつけば媒体価値が上がって広告を置けるようになるし、機能追加による課金化もできる。実践例としては「ポケットフレンズ コンチ」などがある。
2つ目は、サービスの独自性を生かす。サービスを生かして商品開発したり、同じスキームをつかったパッケージを販売したり、サービスそのものを売ったりする。たとえば『こえ部』では、『愛を読む人』という朗読をテーマにした映画にひっかけて、世界の名作を読み上げてもらう企画を実施して、最後に目の不自由な方の団体にCDを配布した。
3つ目は、受託制作への転用。たとえば『16小節のカブソング』という株の騰落グラフを音符に見立てて音楽にするサービスがあるが、これをサンプルとして企業のプロモーション企画を受注したり、プログラマーのトレーニング用に使ったことのない技術の導入実験としても活用できた。結果として、受注増につながったり、工数や教育コストが最終的に下がる効果が得られてコスト削減につながった。
我々は『つくったものは無駄にならない』と考えている。いっぱい作ってゴミの山のようにもみえるが、なんだかんでお金にはなっている。とにかく作ってみることが大事。あとは、楽しくやること。
また、『あとからでも十分にマネタイズできる』とも考えている。そのためには、考えることをあきらめない。作ってそれで終わりではなく、そのあと、どうやってマネタイズしたらいいのかとか、ほかのサービスをどうやって生かしていったらいいのかとその後の提案や開発に商品転用に頭を使う。
ただ、新サービスを作るときによくあるものを作ってしまうと、最終的に転用先がなくなる。できるだけ独自の方向性をもたせていくことが重要だと考えている」