今、僕らは南アフリカ共和国に滞在している。南半球はこれから冬が訪れようとしており、夜はダウンコートが手離せないほど肌寒い。つい2週間前、僕らはウズベキスタンにいた。ワールドカップアジア最終予選の3連戦に挑むサッカー日本代表を追い掛け、タシケント、東京、メルボルンと飛び回り、その後コンフェデ杯が開催されている南アフリカへとやってきたのだ。
この航路を世界地図に引いてみると、見事な「コ」を描くことになる。世界地図をキャンパスにして自分が辿った旅路を「お絵描き」するのも、旅人としてのひとつの楽しみである。
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南アフリカの人は「忍術」が大好き?
さて、「世界一蹴の旅」における最終ゴールにいきなり辿り着いてしまったわけだが、僕らが1年もフライングしてこの地を訪れた目的はただ一つ。ワールドカップ本番の下見を行うためだ。
治安の悪さや交通網の不備、スタジアム建設の遅延など、不穏な噂ばかりが目につくホスト国、南アフリカ共和国で、本当にワールドカップが開催できるのかどうか? このポイントを現地人にインタビューしたり、実際にコンフェデ杯の試合をスタジアム観戦したり、様々な手段を用いながら、体当たり検証を行いたいと考えている。
そんなわけで、至る所で現地人と交流を図るシーンをビデオに収めているのだが、南アフリカに到着した初日、複数の人々との会話から、ある一つの結論が導き出された。南アフリカの男性達は、日本の「忍術」に非常に興味があるというのだ。とにかくこの動画を見てほしい。
空港に降り立つや否や、コンフェデ杯のスタッフから「忍術は知ってるか?」と聞かれたり、街でショッピングしていると突然、忍術の「構え」をされたり、こんな異国の地で日本の文化に触れることになるとは、予想だにしなかったことである。
この2つの出来事から、「南アフリカ人はみんな忍術が好き」という結論を導き出せるわけではないが、日本の文化がアフリカ大陸の南端の国にまで波及しているという事実に、僕は日本人として誇らしく思えた。
現地人いわく「どの国にも、良い人もいれば悪い人もいる」
2009年6月21日、南アの首都プレトリアのロフタス・ヴァースフェルド・スタジアムで、コンフェデ杯の予選グループBの第3戦、イタリア対ブラジルの試合をスタジアム観戦してきた。
100米ドル(約9,600円)もするカテゴリー1の席には、母国からはるばる訪れたと思われるイタリア人、ブラジル人でごった返しており、子供連れや女性の姿も多く目に付いた。夜10時過ぎに試合終了の笛が鳴り響き、41,000人の来場者は真っ暗な道を辿りながら、それぞれの家路に着いた。
僕の視界に入る範囲に限っては、今まで現地で観戦してきたワールドカップやアジアカップ、オリンピックの国際大会と何ら変わりなく、至って順調に大会運営がなされているように見受けられる。自分自身も、犯罪らしいものを目撃する体験は皆無であり、逆に各地で出会う南アフリカ人の陽気さ、フレンドリーさに感銘すら覚える。
仲良くなった南アフリカ人に話を聞いてみた。
「南アフリカは世界で一番危険だと言われるけれど、そんなことはない。そりゃー暗い夜道を女性一人で歩いたりしたら、犯罪にあうかもしれない。でもそれって東京でも同じじゃないか? 世界中どこの国に行っても、良い人もいれば悪い人もいる。治安の悪いエリアに行かない限り、南アフリカは安全な国だと断言できるよ」
何をもって安全、危険と判断するか。それは人それぞれである。
各国サポーターは「コンフェデ杯」を大いに楽しんでいる
現場で体験した事実が全てとは言わない。僕自身もコンフェデ杯の全試合を観戦して、現地で発生した全ての犯罪ニュースを把握したわけではないので、「南ア=安全」なんて言えるはずもない。
実際、外務省からは「南アフリカに対する渡航情報(危険情報)」や「FIFAコンフェデレーション・カップ南アフリカ2009開催期間中の留意事項について」といった情報が出ており、渡航者に「十分注意してください」と呼びかけている。プレトリアについても「セントラル地区において強盗や窃盗等の犯罪が日常的に発生しています」なんて書いてあるのを読むと、とてもじゃないが外国人が足を踏み入れられる国じゃない気もしてくる。
だが、少なくとも言えるのは、いま南アフリカに集まっている各国のサポーターたちは、このコンフェデ杯を大いに楽しんでいるということ。あと1年で日本の外務省からお墨付きをもらって、多くの日本人にこの楽しさを味わってもらえるよう、南アフリカ政府にはいっそうの治安改善の努力をお願いしたい。
僕らは6月25日のブラジルvs.南アフリカの準決勝、6月28日の決勝と観戦チケットを手配済みなので、治安に十分気を配りながら、残りのコンフェデ杯の盛り上がりを目一杯体感しようと思う。
アシシ@プレトリア