リクルートの「大学生の就職志望企業ランキング」で、JR東海と東日本が1位と2位についたそうだ。理由はなんといっても安定性だろう。それだけ不況の影響を肌で感じる学生が多いということだ。リスクは取りたくないという「寄らば大樹型」の人にとって、JRがとても魅力的な会社であるのは間違いない。
ただし、面接ではそういう話はしないほうがよい。以前にも書いたように、年功序列型賃金とは、要するに世代ごとの平均賃金のことであり、大きく下がるリスクが無いかわりに上積みも期待できない。
「だが、それがいい」というマイペース型の人を、企業はとても嫌がるものだ。「残業多いですか」とか「有給全部使えますか」と聞くのがまずいのも、同じ理由である。
ローリスク・ローリターン型の学生に文句を言える分際か
ところで、よく「企業と学生のミスマッチ」なんて話を聞くが、それはまさにこの部分の話だ。一般には学生のワガママで片付けられることも多いが、実際にはハイリスク・ハイリターンなキャリアパスを持たない分際で、ローリスク・ローリターン型の学生に文句を言う企業側に責任がある。本当にハイリスク・ハイリターン型が欲しいなら、ちゃんとそういうキャリアパスを用意すべきだ。
初年度から年俸制、30歳でマネージャー抜擢、当然、そのための原資は中高年の処遇見直しで捻出すると。そういう改革をやらずに、ハイリスク・ハイリターン型の若者を騙して採用したところで、これだけ転職市場が成熟した今、3年以内に逃げられるだけの話だろう。
そういえば学生時代、僕はJR東日本をOB訪問したことがあるのだが、30代のOBに「うちの魅力は?」と聞かれ、「御社の魅力は安定性です」と正直に言ったら、めちゃくちゃ怒られた経験がある。
だって、JRなんて他に魅力がないんだから、しかたないだろう。そもそも、黄金の80年代に国鉄に就職するようなスーパー・ローリスク志向の先輩に、なんで説教されなきゃならんのだ。
というわけで、今でも自分と同じ意見の若者が多いという事実には、とても満足している。
城 繁幸