不況の影響で、派遣スタッフの削減などリストラが進められた結果、中堅社員の仕事量が大幅に増えている。「後輩の指導・育成」もその一つで、会社の人事担当者は中堅社員に期待を寄せているが、実際にはほとんど遂行されていない――そんな調査結果が発表された。
後輩の育成を「期待する」は7割超、「遂行している」はわずか3%
産業能率大学総合研究所は、「中堅社員」に寄せられる期待や現状に関する調査結果を発表した。「入社5~10年、20代後半から30代前半」の中堅社員について、企業の人事・人材開発担当者が回答している。
中堅社員に対して期待する役割は、「後輩の育成」が72.5%と最も高いが、現実への評価は「遂行している」が2.9%ときわめて低い。「やや遂行している」とあわせても3割程度にとどまり、期待と遂行のギャップは大きくなっている。
また、中堅社員育成について会社が今後強化したいことは、教育的施策では「階層別の役割認識研修」(44.9%)が多い。強化したい仕組みとしては「メンター制度」(20.3%)、「OJT制度」(18.8%)が多かった。個別の業務能力もさることながら、組織の中で「人への働きかけ」を積極的に行う役割を認識してもらいたいということだろう。
しかし、J-CAST会社ウォッチの連載コラム「熱い職場委員会」の筆者でコンサルタントの大塚寿氏は、「この結果には、人事と現場の認識ギャップが大きくあらわれている」と指摘する。
「この10年、会社は制度によって、社員を利己的にさせてきたのではなかったか。新入社員が放っておかれているのは、みんな自分の業務をこなすので精一杯だから。この問題を現場だけに任せるのは酷だ。若手の育成を中堅社員に任せるのなら、たとえば業績評価の10%をそこに割り当てるなどの手当てが必要。人を育てるのがうまい人が評価されるようになれば、チームが活性化され、成果も上がるようになるだろう」