3.60代になったときに30代の若手と組んで新しいことに挑戦できたら、ビジネス人生はもっと充実する
MBAでは、理想のキャリア像や自分にとっての「成功」「幸せ」について、青臭い議論をよく行いました。その中で自分なりに得たのは、「キャリアは旅路のようなものである。結果を早く追い求めるのではなく、その過程の一瞬一秒を満喫しなければならない」という考えです。それまではとにかく生き急ごうと考えていたふしもあったので、これは大きな糧でした。
しかし、それはあくまでも「今日」のことだけを見据えているのであり、自分が実際に60代にさしかかったときのイメージは持っていませんでした。それが、自分の父親と同じ年である出口と二人でライフネット生命をはじめてから、自分がどのようにキャリアのピークを迎えたいか、明確にイメージすることができるようになりました。
多くの人は60歳前後で定年を迎え、そこからはゴルフをしたり旅行をしたり、静かに余生を過ごします。しかし、実際に多くの60代と仕事をしてみると――当社の従業員の1割近くは元気な60代です――まだまだ夢も余力もいっぱいあり、30代の若手と力を合わせることで、ベテランの経験や知恵と若手の行動力を活かしたビジネスを創っていけることを学びました。そのような環境にいる60代の人間は、老けこむことなく、むしろ日に日に若返っていくようにすら見えます。その挑戦する姿には、ロマンと熱いものを感じます。
ビジネススクールでは明確に描くことはできていなかったのですが、今の僕のキャリアの目標は明確です。自分が60代になったときに、30代の若手のパートナーを探し、再び新しいベンチャー企業を創って、自分のライフワークに挑戦したいのです。
ハーバードMBAでは教えてくれなかった、そんな大切なことを、ライフネット生命を開業してからの1年間で強く心に刻むことができました。
岩瀬 大輔