日本の代表的な雑誌の編集長たちが公開の場で「週刊誌の将来」を考えるシンポジウムが2009年5月15日に、上智大学キャンパスで開かれた。その模様をミニブログ「Twitter」で実況中継したジャーナリストの津田大介さんに、レポートの狙いやシンポジウムの感想を聞いた。
>>「週刊誌の将来」考えるイベント 詳報したのはネットだった
「電波がうまく入らなかったのが大変だった」
Twitterの津田大介さんのプロフィールページ
――なぜ今回のシンポジウムをTwitterでレポートしようと思ったのですか?
津田 Twitterは不特定多数のユーザーに今現場で起きていることを効率的に発信するのに適したツールですから、これを使ってイベントの内容をリアルタイムで編集してアップしていくと面白いだろうと思って、同様のテキスト中継を2年前くらいから適宜やっています。今回のイベントもその延長ですね。
今回のイベントは、日本の主要な週刊誌の編集長・元編集長が集まって週刊誌の未来について話すという滅多に見られないことですし、実際に刺激的な内容のシンポジウムだったと思います。
――会場の雰囲気はどんな様子だったでしょうか? また、会場が一番沸いたのは、誰のどんな発言のときでしたか?
津田 定員200人強くらいの会場に立ち見が50人くらいいるような状況で、凄い熱気でしたね。後から聞いた話では、遅れてきた人は立ち見も不可能ですごすご帰るしかないみたいな感じだったそうです。
会場が沸いたのはいくつかあったので、どれが特に盛り上がったということはないのですが、個人的には、週刊朝日の編集長に「新聞社のウェブ記事は、掲載期間が過ぎたら表示されなくなって、無料では記事検索もできなくなる」と批判した学生が、受信料で安泰なNHKに就職したという話はいろいろな意味で象徴的だなと思いました。
――現場でレポートするうえでどんなことが大変だったのでしょう?
津田 通信カードの電波がとても弱くて入ったり入らなかったりしたので、それが一番大変でしたね。エディタにどんどん打ち込んだテキストを、Twitterのクライアントで送信して5回に1回くらい偶然送信できる、みたいなことを繰り返しました。
あとは、今回、会場の音響がとても悪くて、後ろの方の席だとパネラーが何を言ってるのかまったく聞き取れないこともあったので、それが厳しかったです。
若者は「週刊誌の未来」に関心があるか?
――会場には若い人がかなり来ていたとのことですが、若い人たちも週刊誌の行く末について大きな関心をもっているということでしょうか?
津田 若い人が多かった理由は、司会の元木さんや上智大学の田島先生の生徒さんが多かったからだと思います。
若い人はやっぱり週刊誌は買ってないし、行く末についてはあまり大きな関心は持ってないでしょうね。でも、ポータルサイトなどのニュース記事などは週刊誌的なゴシップ記事がアクセス上位に来るという話ですから、興味ある情報をうまい形でネットに展開できてないという考え方もできるのかもしれません。
結局、現状の週刊誌が記事を作るコストをネットで回収できる手段・プラットフォームがないって話になるんでしょうけど、このあたりってもう10年くらいされてる議論で全然進んでないですからねぇ。
――津田さん自身はシンポジウムを聴いて、どのような感想をもったでしょうか?
津田 週刊誌の人たちはなんだかんだ言ってバイタリティーがあるし、自分たちが置かれている厳しい状況をそれぞれの立場で正確に認識しているなと思いました。「ネットvs既存マスコミ」のような単純化した構図じゃなく、いま置かれているメディア環境が今後どのように変わっていくか、多面的な立場からこうした議論が今以上にされる必要があると思いました。
3時間以上にわたったシンポジウムの内容を、リアルタイムでレポートし続けた津田さんのエネルギーは並大抵ではない。しかも、「1エントリー140字以内」というTwitterの制約にあわせて、それぞれの発言をうまく要約していくのは大変な作業だ。誰にでもできる技ではない。そんなことから、Twitterでイベントなどを生中継することを「Tsudaる」と呼ぶらしい。