冷静に考えてみれば、実に不思議な話だ。国が「この恵まれない人たちを採用してあげてください」といって企業に500万円くれるらしい。その恵まれない方々というのは、博士号取得者だ。
普通、こういう雇用助成金というのは、労働市場で不利になるグループに対して設定されるものだ。たとえば、現行のトライアル雇用助成では、母子家庭、障害者、日雇労働者やホームレスといった層を対象としている。ちなみにこの制度の場合、支給金額は最大4万円×3ヶ月=12万円だ。その一方で、博士という高学歴者に500万つけなければならない日本という国は、やはり異常だろう。
企業が博士号取得者を採らないワケ
なぜ、企業は博士を採らないのか。それは、人の価値が年齢で決まるからだ。
労組とちゃんと毎年労使協議しているような会社なら、年齢である程度の賃金水準は決められている。22歳で300万、30歳で550万という具合だ。
となると、30歳の博士過程修了者を採用した場合、企業側は250万ものコストアップを受け入れる必要がある。実際500万分の働きが出来ればいいが、いくらなんでもそれは無理な話だろう。結果、研究内容が直結するような一部研究職を除いて、博士は排除されることになる。これは文系の修士以上にも見られる現象だ。
この話をすると「働きによって柔軟に報酬を決めればいいじゃないか」という人がいるが、なんのことはない、僕が常々言っている職務給とはまさにそれだ。
税金かけて30過ぎまで育成して、採ってもらうためにまた税金支払っているのだから、年功序列というものは、まったくもってくだらない仕組みである。官民あげてこんなバカなことやってたら、そりゃ日本経済も伸び悩むわけだ。