ケータイのおかげで「学校のいじめ」がなくなった!

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   子供とケータイについて議論が大きくなりはじめた昨夏以降、折に触れて子供たちにケータイの使い方などを聞いています。

   まず、子供たちのケータイ所持率は、各種の調査を総合すると、だいたい次のようになります(全国での推計)。

小学生→3人に1人が所持
中学生→2人に1人が所持
高校生→ほぼ全員が所持(所持率90%以上)

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塾の講師や友達にわからないことをメールで相談

   小中学生については、大都市圏での所持率が全体の数値を大きくしている面があるかもしれません。いずれにせよ、必ずしも興味本位ではなく、「必要があって」持っているのだ、と子供たちは言います。

   直接、話を聞いたなかで多数を占めたのは、学校以外での活動で欠かせないというもの。学習塾など習い事の行き帰りに親と連絡を取るというのは、誰もが容易に想像のつくことです。

   そこで、親と連絡するだけなのであれば、わざわざケータイを持たなくても公衆電話を増やせばいい、という意見も根強くあります。

   しかし、子供たちに聞くと、ケータイの用途は何も親と連絡するだけではありません。むしろ、塾の講師や友達にわからないことをメールで訊ねるなど、コミュニケーションをはかるツールとしての使い方のほうが大きいのです。

   これは、少年野球やサッカー、合唱団など、複数の学校の生徒が参加する課外活動においても同様です。急な連絡のほかに、優秀な子供への個別指導でも、贔屓と見られないためにケータイは不可欠だとか。

学校の先生とメールアドレスを交換するのは珍しくない

   実は学校においても変わりありません。

   子供たちによれば、学校の先生とメールアドレスを交換するのは珍しいことではないそうです。成長期にある子供ならではの、親には言えない悩み事や勉強の相談にケータイは欠かせないというのです(これが悪い方へ出ると、教師によるセクハラや淫行に繋がります)。

   さらに、実際に聞いた話には、ケータイによっていじめが解決したというケースもありました。

   いじめられている子供が思い切ってケータイのメールで先生に相談。先生は極秘裏にいじめている側の生徒に対し、個別にケータイメールでそれとなく事実確認を行って諭しつつ、機が熟したところでクラス討議にいじめ問題を取り上げ、見事にいじめを一掃した……

   子供とケータイについては、負の部分ばかりが取り上げられがちですが、コミュニケーション・ツールである以上、命綱としての機能も当然ながらあるのです。

   そもそも、ケータイを使って子供を悪の道に陥れるのは、教師によるセクハラや出会い系サイトの例を見てもわかるように、ほとんどの場合が大人です。最近、新たに問題化しつつある「ケータイ鬼ごっこ」も、元を正せば大人が考えたもの。

   ならば、ケータイのポジティブな使い方を子供に見せていくのも、また大人の責務なのではないでしょうか。

   ケータイがこの世からなくなるということは、近未来においてはありえません。いったん撤去され、廃棄された公衆電話を戻せなどというのは、通信回線(無線回線)が社会インフラである限りナンセンスな議論です。

   大人が逃げていては、子供は迷うばかりです。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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