彦根市のひこにゃん、鳥取県のトリピー、そして、杉並区のなみすけ。ゆる~い癒し系のキャラクター、いわゆる「ゆるキャラ」が大人気である。みうらじゅんの定義によれば、「ゆるキャラとは、地方自治体主催のイベントや村おこし、名産品などのPRのために作られた、ゆるゆるのキャラクターのこと」とされているが、最近は企業もゆるキャラの経済効果に注目しはじめた。製薬メーカー・全薬工業の「ヤクミン」はその一つだ。
オカリナをふくのが得意な「薬の妖精」
ブログの「健康度」をチェックしてくれる「ヤクミン ブログパーツ」
ヤクミンは2009年4月13日、全薬工業のウェブサイトでデビューした。白い歯に黒ゴマがくっついたような容姿をしているが、れっきとした薬の妖精だ。背中には天使のような青い羽根がついていて、パタパタと飛ぶことができる。いつも人々の健康を見守っていて、困っている人がいるとオカリナの音とともに現れるのだ。
生まれたのは3年前。「うちの会社にもオリジナルキャラクターがあったらいいね」という社長の一言がきっかけで、全社をまきこんだコンテストが開催された。152点の応募作品(イラスト&愛称)の中から選ばれたのが、医薬品開発部門の男性社員が提案したヤクミンだった。
この癒し系キャラをどう活用するか。社内でじっくり検討した結果、商品キャラクターとして直接宣伝に使うよりも、健康についての啓発活動やキャンペーン事業の中で使っていくのがいいだろうということになった。
「ゆくゆくは、ヤクミンのケータイストラップを作ったり、印刷物のなかに登場させたりすることも考えていますが、まずはウェブで展開してみることにしました」(同社営業推進部の新海宏一次長)
ブログの「不健康ワード」に絆創膏をペタペタ
ヤクミンのぬいぐるみの試作品。背中の青い羽根は左と右で微妙に色が違ったりと芸が細かい
全薬工業のサイトには、「ヤクミンワールド」という名の専用ページが登場。ヤクミンとその仲間が子供のために健康について教えてくれる「アニメ絵本」や、ブログの"健康度"をヤクミンがチェックする「ブログパーツ」が設けられている。
面白いのは、ブログの"健康度"が分かる「ヤクミン ブログパーツ」だ。自分のブログにブログパーツを貼り付けて「ブログけんこうチェック」というボタンをクリックすると、「かぜ」「つかれ」「せき」といった"不健康ワード"にヤクミンが近付いていって、次々と絆創膏を貼っていく。このブログパーツを使えば、そのブログが健康かどうか判別できるというわけだ。
今後はインターネットというバーチャルの場だけでなく、ぬいぐるみやストラップとしてリアルな場にも進出することが計画されているヤクミン。ゆるキャラのライバルは多いが、マイペースでゆるゆると活躍の場を広げていくことを期待したい。