ギスギスした職場は居心地が悪いし、なによりコミュニケーションが円滑でないので効率が悪い。誰もがそう分かっているのに、お互いが意地を張って会社や上司を目の敵にしている。そんな風にして1日の大半の時間を費やす「不機嫌な職場」は、誰の手によって変えることができるのだろうか。
職場活性化を担当する「部署」は存在しない
これまでいくつかの職場活性化策を紹介してきたが、それは会社や管理職がやればいいこと、自分には関係ないと考える人がいるかもしれない。しかし「不機嫌な職場」を育てているのは、「自分は自分の仕事をこなすだけ」「会社に協力したら負けだ」などと意固地になっているメンバー自身でもある。
組織の成果を伸ばしたければ、「与えられた仕事をして給料をもらっていればいい」という考えでは難しい。会社が「人間の集団」である限り、力を合わせて目標を達成していくためには、感情を伴ったコミュニケーションが必要だ。もちろん職場にはいろいろなタイプがあるが、静かに燃える社員が多い職場にも、それに相応しい方策が必ずあると思う。
結局、ほとんどの会社の場合、職場活性化を担当する部署は存在しない。中間管理職層にしても、課題感を持ってはいても直面する課題が優先されている。景気がよければ業績が上がり、それだけで職場が元気になるが、いまはそうもいかない。
そこで提案なのだが、もう他力本願はやめよう。結局、職場の空気は誰がつくってくれるものでもなく、そこに所属しているメンバー一人ひとりによって構成されているものなのだ。ギスギスした職場環境で平気な人なんて、いるはずがない。
「会社が――」「上司が――」という不満や、許しがたい想いもあるだろう。だが、それはそれとして、自分たちが一日のほとんどを過ごす職場環境を、自分たちの手で少しずつでも理想に近いものに変えていく動きをしようではないか。
居心地を良くするアクションを自ら起こそう
問題の根幹は、仕事がタコツボ化して、自分の仕事に没頭すればするほど、他のメンバーとの利害が対立し、コミュニケーションが悪くなっているところにある。つまり、会社のオフィシャルな取り組みにも限界があるという側面があり、ボトムアップの工夫が効果を上げることがある。
これは年商20億円規模の会社の、2年目社員の事例なのだが、彼は職場で「華金クラブ」なるものを実施している。彼は毎週、同じ居酒屋で飲んでおり、そこに職場の人々を誘い込むのだ。彼は金曜の朝になると、「今日は華金クラブの日でーす!」と告知し、再び昼に中押し告知、定時に告知、出発前30分前に「先に行ってまーす!」とダメ押し告知をして参加者を募る。
「飲ミュニケーション予算」で紹介したような会社負担の飲み会ではなく、あくまで個人的な誘いであるところがミソである。「ちょっと飲みたいけど、ひとりじゃなぁ」と思っている人が気軽に参加でき、割り勘なので「部下を誘いたいけど、1万円飛んじゃうと家計に響くしなぁ」とためらっているミドルにも好評だ。
主催者の動機は、ただ単に「職場で話したことのない人と話したかっただけ」というが、職場コミュニケーションの潤滑油となっていることは確かだ。重要なのはアルコールだけでなく、自発的で非公式な集まりであるということ。参加者は、仕事上つながりのなかった人と隣り合って声をかけ、お互いの人となりを知り、会社の課題について言葉を交わし、タコツボ化した仕事を横断する視点を提供しあったりする。
そして、これが人脈という新しい「情報ルート」となる。そうやって課題を共有した人たちの集まりで、硬直した組織運営について風穴をあける方法論について意見を交換し、しかるべきルートを使って制度化していく。読者の皆さんには、そんな取り組みの先頭に立っていただきたいと思う。
大塚 寿