居心地を良くするアクションを自ら起こそう
問題の根幹は、仕事がタコツボ化して、自分の仕事に没頭すればするほど、他のメンバーとの利害が対立し、コミュニケーションが悪くなっているところにある。つまり、会社のオフィシャルな取り組みにも限界があるという側面があり、ボトムアップの工夫が効果を上げることがある。
これは年商20億円規模の会社の、2年目社員の事例なのだが、彼は職場で「華金クラブ」なるものを実施している。彼は毎週、同じ居酒屋で飲んでおり、そこに職場の人々を誘い込むのだ。彼は金曜の朝になると、「今日は華金クラブの日でーす!」と告知し、再び昼に中押し告知、定時に告知、出発前30分前に「先に行ってまーす!」とダメ押し告知をして参加者を募る。
「飲ミュニケーション予算」で紹介したような会社負担の飲み会ではなく、あくまで個人的な誘いであるところがミソである。「ちょっと飲みたいけど、ひとりじゃなぁ」と思っている人が気軽に参加でき、割り勘なので「部下を誘いたいけど、1万円飛んじゃうと家計に響くしなぁ」とためらっているミドルにも好評だ。
主催者の動機は、ただ単に「職場で話したことのない人と話したかっただけ」というが、職場コミュニケーションの潤滑油となっていることは確かだ。重要なのはアルコールだけでなく、自発的で非公式な集まりであるということ。参加者は、仕事上つながりのなかった人と隣り合って声をかけ、お互いの人となりを知り、会社の課題について言葉を交わし、タコツボ化した仕事を横断する視点を提供しあったりする。
そして、これが人脈という新しい「情報ルート」となる。そうやって課題を共有した人たちの集まりで、硬直した組織運営について風穴をあける方法論について意見を交換し、しかるべきルートを使って制度化していく。読者の皆さんには、そんな取り組みの先頭に立っていただきたいと思う。
大塚 寿