私のような者でも、時々、講演を依頼してくださる方がいらっしゃいます。
ある時、小学校で子供と携帯電話について話す機会がありました。話を聞いてくださっているのは、小学生のお母さん方です。ひととおり話を終え、雑談のなかで40代の親御さんがポツリと漏らしました。
「最近の若いお母さん方を見ていると、さすがに『ちょっと、どうかな』と思うことが多いですよ……」
この親御さんによれば、幼稚園や保育園などの「お迎え」の道すがら、あるいは、その後に公園などで遊ばせている間、お母さん方がケータイに夢中になっている光景をよく見かけるのだそうです。
ケータイ依存は子供よりも大人のほうが問題
「お迎えから帰る途中、子供の手を引きながら通話に夢中になっているなんて、ごく当たり前。幼稚園児でしょう、あれじゃあ子供が転んでから、何かにぶつかってからしか気づかないですよ」
転んだ先が道路で、たまたま通りがかった車に轢かれてしまったら……。ぶつかった電柱などに突起物があって、顔などに刺さってしまったら……。
注意が散漫になりやすい子供だからこそ、親が守ってやらなければならないはずです。
話を聞いていた別の親御さんも加わってきました。
「公園でも、子供をブランコやジャングルジムで遊ばせておいて、その横でメールを打っていたり、離れたベンチに座って通話していたり。万が一、さらわれそうになっても、気づかないかも」
これが10代かと思えば、30代の母親でも珍しくないと言います。
子供の携帯依存、ネット依存が問題視されています。でも、本当に携帯依存、ネット依存(メールはネットの利用法の一つです)なのは、実は大人の方なのではないでしょうか。
「他人のフリ見て我がフリ直せ」とは、いまの大人たちに向けた警句に思えてなりません。
井上トシユキ