臨床心理士・尾崎健一の視点
まず相談者の気持ちを聴こう
ハラスメントに関する訴訟が起こされるのは、被害の相談をしたときに重要に扱われなかったことへの「失望」が発端になっているケースがほとんどです。「会社にいれば、その程度のことはあるもんじゃないの?」とか「飲んだ席でのことは、会社では何とも対処のしようがないなあ」とか、そういう対応が問題を大きく広げます。
セクハラやパワハラの判断の基準は「被害者の感じ方」によって変わるということが、世の中にだいぶ浸透してきました。相談を受ける上司や相談窓口の担当者が注意すべきなのは、どのようなハラスメントが行われたかという「事実の確認」をする前に、まずは被害者の立場に立って「気持ちを聴く」ことです。相談や訴えを受けた人が被害者の気持ちをいかに受け止めて耳を傾けられるかが、最大のポイントです。人権啓発やメンタルヘルス対応の観点から「傾聴」の研修を実施している大手企業も増えています。