あちこちでされる質問に、「これだけ成果主義が普及したのに、どうして若い者はすぐ辞めるのか?」というものがある。チャンスが増えているはずなのに辞めるのは、それだけ忍耐が足りなくなった証拠だろう、というロジックだ。
ただし、そういった時にでてくる“成果主義”なるものが一体なんであるのか、人によってずいぶん幅があるようだ。というわけで、今回は年功序列と成果主義、それぞれの定義についてまとめてみたい。
まずは年功序列制度だが、これはいつも言っているように、若い頃に働き溜めた年功に対するご褒美を、将来の出世(あるいは昇給)と言う形で受け取るというものだ。だいたい35歳くらいまでは割に合わず、45歳を過ぎてからそれなりの収入を手に入れることが出来る。一言でいうなら、出世払いというところだ。
これに対して、成果主義とはタイムリーにキャッシュで支払うというシステムで、「将来の出世」だとか「若い頃の苦労」とかいった曖昧なキーワードはでてこない。プロ野球の年俸制をイメージしてもらえればいいだろう。当然、成果に応じて年収はある程度柔軟に見直されることになる。
日本企業の「成果主義」の実態は?
では、現在、日本企業でも普及した成果主義なるものは、上記の定義によればどちらに当たるだろうか? ほとんどの企業では賃下げや降格は実施されず、新規の昇給や昇格、一時金の差が広がるだけで、とても成果主義というには程遠い代物だろう。そもそも横並び初任給だったり、仕事をしない上司が存在している時点で、それは本質的には年功序列制度である。
そう考えると、若手にとってチャンスが増えているとは必ずしも言えない状況であることが分かるだろう。むしろ低成長時代になり、将来の出世に期待できない以上、若い世代が流動化するのは自然な流れである。
余談だが、一部公務員の中には、査定制度の導入に対して「成果主義だ!新自由主義的改革だ!」といってアレルギー反応を示す人がいるが、査定なんてものは民間は何十年も昔からやっているわけで、完全横並びの方がよっぽど異常である。働きぶりで差をつけられるのは自由主義社会である以上は当然のこと。納得できないなら転職すればいいだけの話だ。
城 繁幸