3月23日、政労使の間で、ワークシェア推進に関する合意が成立した。政治は助成金などで環境面のお膳立てをし、労使はルール作りを共に進めて雇用の維持を図るとするものだ。
恐らく、オランダで同一労働同一賃金を実現するため、政労使の間でなされたワッセナー合意を意識しているのだろうが、これをきっかけに日本で同じように議論が進むとは考えにくい。
理由は、日本では労組が企業別に組織されており、さらにはそのほとんどが正社員限定で運営されているためだ。連合は組合員の雇用維持だけを念頭に議論を進め、派遣やパートはほったらかしになるだろう。議論も抜本的な賃金水準の見直しには踏み込まず、正社員の休日を増やす、残業禁止等といった措置を個別の企業で実施する程度のはずだ。
非正規雇用の代表も参加しなければ解決しない
もっとも、それ自体をどうこうはいえない。もともと彼らは全労働者の代表でもなんでもなく、組合費を払っている人間のための団体なので、組合員の利益のために政治活動を行なうのは当然のことだ。問題の本質は、非正規雇用の代表がテーブルについていない点にある。
という話を先日、あるイベントでフリーターの若者にしたところ、
「確かに、それでは問題の解決になっていない。全然だめですよ!」
「では、どうすべきだと思う?」
「我々非正規雇用の代表も交渉のテーブルに着くべきです。そして四者の間で、同一労働同一賃金に向けた交渉を行なうべきです」
その通り! だから、本当に待遇改善を実現したければ、既存の労組や左派とは距離を置けと言っているのだ。ちなみに、正社員の流動化というのは、そのテーブルで議論するべき議題であり、ただのアプローチに過ぎない。一番大切なことは、交渉の担い手である非正規雇用労働者自身の代表を送り込むことだ。それは連合でも学者でも僕でもなく、まして共産党などではない。
彼ら非正規雇用労働者自身がそれに気づき、自らの組織化を進めないかぎり、日本において真のワークシェアが実現することはないだろう。
城 繁幸