「このままでは自分が壊れてしまう」
さらに「信じられない」と思ったのは、社長や営業幹部が取引先と話をしているときに、ライバル会社のことを口汚く罵っていたことだ。
「『あいつら、つぶれればいいのに』といった暴言をお客様の前で平気で口にするんですよ。狭い業界でやっているのだから、いつ自分にかえってくるか分からないのに……。商売人としてのモラルが完全に欠如している。私はこの人たちとは一緒にやっていけないなと思いました」
白井さんにとって信じがたい出来事が続いたせいで、入社して2週間をすぎたころから、彼女の体調はおかしくなった。夜はよく眠れず、食事ものどを通らなくなった。このままでは自分のほうが壊れてしまう。そう思った白井さんは、このブラック会社に見切りをつけることにした。
入社してわずか1ヶ月。白井さんはこの会社を紹介した人材エージェントに「辞めたい」と相談した。もしかしたら引き止められるかもと思っていたが、「わかりました。社長さんに電話をかけてください」とあっさりした返事。社長に電話すると、同じように「そうですか」と淡々と受け入れた。
「人材エージェントと社長の対応を聞いて、『やられた!』と思いましたね。彼らはもう慣れっこなんですよ、こうして人が辞めていくことに。あとで別の人材紹介会社に聞いたら、この会社は求人募集を毎月のように出しているので有名なんだそうです」
はからずも、ブラック会社という「穴」に落ちてしまった白井さん。いまは次の転職先を見つけるべく、就職活動をしているところだ。