"婚活"という言葉が流行っている。就活ならぬ結婚内定獲得のための活動ということらしい。ほっておいても自然に出会い、結婚できるような時代ではないので、男女問わずに努力しなさいよというわけだ。
だが、すべての原因が、当事者である男女の側にあるというわけではない。実はもう一つ、企業内のある変化も、大きく影響しているように思う。
女性社員の「派遣化」で出会いが大幅減少
従来、特に大手企業は男性を総合職、女性を一般職として採用する傾向が強かった。総合職は幹部候補として長期雇用を基本とするが、一般職は置き換え可能な業務を割り振り、結婚と同時になるべく退職してもらう。これにより、出産や育児に伴う休職コストを回避し、ノウハウも男性に集中できるという狙いがあったのだ。今でも大手の総合職における女性内定者比率は15%に過ぎない。
どこまで意図していたかはともかく、一般職と総合職の社内結婚というケースは多く、結果的に彼女たちがお嫁さん候補となっていた点は否めない。大手金融系などは露骨に容姿で選抜していたものだ。年功序列制度においては、男性は残業・転勤最優先の滅私奉公を求められるが、代りに終身雇用・年功序列といった形で、人生丸抱えしてもらえるという暗黙の了解があった。"出会い"の機会提供も、そんな了解の一つだったのだろう。
ところが90年代後半以降、この流れが崩れ、一般職採用を廃止、あるいは派遣社員に置き換える企業が急増した。いまや34歳以下の女性の非正規雇用比率は4割を超える。その結果、職場内での"出会い"は、大幅に減少することとなった。
こうなった以上は自分で捕まえてくるしかない、それが流行の婚活というわけだが、滅私奉公自体はいまだ残っているわけで、なかなか余裕が無いという人が多いと思われる。
結婚できない男女の「壁」をなくすには「流動化」が必要
実際、僕の周囲にも、入社以来十数年、職場が100%男だらけだという人間がゴロゴロいる。
「おまえ、もう30過ぎたんだから早く結婚したらどうだ」と心配する上司たちは、みな社内結婚。一方、自分は婚活しようにも、毎晩21時まで残業で余裕が無い・・・。
その一方で、女性の多い職場というのもちゃんとあって、そういう場では女性側が出会いの少なさを嘆いている。当然だろう。孤独に缶詰になっている男子がいるということは、それだけ同じ境遇の女子もいるということだ。
考えてみれば不思議な話だ。所帯を持ちたいもん同士、一方は社内に閉じ込められ、一方は締め出され、お互い出会いの少なさを嘆いているのだから。
両者を隔てる壁を取り払うには、いつも言っているように流動化しかない。でも、そもそも、そういう壁の存在に気づいていない人が多いのではないか。
「なんでうちの職場は男しかいないんだろう」とか「どうして女性は総合職になれないの?」とか、そういった疑問を感じているという人は、一度その理由を考えてみてはどうだろう。誰もが自分の問題として向き合うことこそ、解決への最大の近道なのだ。
城 繁幸