「仕事はできるだけやりたくない」「同じ給料なら楽をしたい」では、コツコツやる人と数年後に大きな差がつきます。忙しいからと仕事を断らず、どんどん引き受けることで、小さな仕事の成果が信用を呼び、いつしか大きな仕事を任されるようになります。「わらしべ長者」の主人公のように成り上がりましょう。
どんな仕事でも「喜んで」引き受けよう
これは、以前の職場で目にした光景です。
上司「君、この仕事やってくれないか?」
部下「いま忙しいからできません」
上司「そうか……。分かった」
私はこのやりとりを「もったいないなあ」という気持ちで眺めていました。この「分かった」には「ああ、君にはヤル気が無いのが分かった。もう頼まん」という意味が含まれていることが、傍目にも分かりました。もしヤル気がないわけではないとしても、仕事を頼もうと思っていた上司からは、どうしてもそう受け取られてしまいます。
目の前の仕事で手一杯なのが本音でしょうし、頼んだ上司は、あなたがどんなに大変な仕事に直面しているか、往々にして把握していません。あなたの能力も、少し買いかぶられているかもしれません。
しかし、凡人はどんな仕事でも喜んで引き受けて、精一杯やってこそ次の仕事につながるのです。「その仕事」こそ、あなたが長者になるための「わらしべ」かもしれません。まず仕事を頼まれたら、喜んで引き受けましょう。少なくとも「どんなお仕事でしょうか」と答えるのが凡人の礼儀です。
小さな仕事の成果が信用を呼び、だんだんと大きな仕事を任されるようになること。私はこれを「キャリアのわらしべ長者理論」と名づけました。「わらしべ長者」は、貧しい男が観音様のお告げに従って、拾った藁を大事に持って旅に出たところ、物々交換を繰り返し、アブを結びつけた藁がミカンに、ミカンが反物に、反物が馬に変わり、最後には大きなお屋敷を手に入れるというおとぎ話でした。
「言われたことだけ」では数年後に天地の差がつく
この理論に沿えば、与えられた仕事は当然のこと、転んで偶然ひろった仕事でも、チャンスと考えて精一杯やらなければなりません。ただし、無責任に何でも引き受けて、できなければしようがないので「最終成果物は何か」「いつまでにやるのか」などの確認は忘れてはなりません。
不安があれば、その場で上司に正直に言いましょう。そのときに「ま、大丈夫だよ。頑張って」とポンと肩を叩かれたら「はい、やってみます」と、微笑んで引き受けざるを得ません。
私にも、忙しいときに突発的な業務が入ることが何度かありましたが、断ったことはありませんでした。というより、自分よりもずっと忙しい先輩や上司の仕事ぶりを見ていると、断る気にはなれなかったのです。デキる人を見ていれば、自分の要領がいかに悪いかが分かります。
「言われたことだけやっていれば給料はもらえるのだから、それ以上はやる必要ない」と思われる人は、いつまでも同じ仕事のままです。「いま忙しいので」とその場を切り抜けているのと、一時的な苦労を顧みずに仕事をする人とでは、数年後には天地の差がつきます。
「仕事は忙しい人に頼め」ということわざがあります。忙しい人は、納期内に一定の質・量の仕事を仕上げるために、最短距離を取ろうとします。なので、仕事を仕上げられる確率が高いのです。自分が忙しいと思っても、上には上がいます。力を付けて「急ぎの仕事はあの人に頼め」と言われる力を目指しましょう。
野崎大輔