「自分がやっていることは悪いことじゃない」
しかし、突きつけられた現実は「契約途中での解雇」というもっと厳しいものだった。
その現実に甘んじることができず、派遣ユニオンに加入して、解雇撤回を求める活動を始めた荒井さん。堂々と実名を出して取材に応じ、テレビカメラの前で臆することなくビラ配りをした。「派遣切り」の象徴的な存在として、マスコミから取材依頼が殺到。テレビの討論番組にも招かれて、意見を述べたりした。
「テレビに出ながら仕事に行っていると、同じラインの人からは『お前が何をしたいのか分からない』と言われたりしたけど、別に気にならなかった。自分がやっていることが悪いことだとは思わなかったので」
結果的にその行動力は報われた。派遣会社は解雇通告を撤回し、契約期間満了までの賃金を保証した。寮もすぐに退去しなくてよいことになったのだ。
「『組合活動なんてやっても意味ないじゃん』といろんな人から言われたし、2ちゃんねるに悪口を書かれてヘコんだこともあったけど、やった意味はありましたよ」
いま、荒井さんは派遣会社の寮を出て近くに部屋を借り、週に4、5日、ガソリンスタンドで働いている。それだけでは生活が大変なので、夜はパチンコ屋で働こうと仕事を探しているところだ。