「派遣切り」泣き寝入りするのはイヤだった

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クルマの仕事がしたかった

   そもそも荒井さんが自動車工場で働いてみようと思ったのは、車が大好きだったからだ。自動車の修理工場を営む父の影響で、小さなときから車いじりに親しんだ。高校1年からバイクに乗り、18歳になると同時に普通車の免許もすぐ取った。

   神奈川県内の高校を卒業して、ガソリンスタンドでアルバイトをした後、タクシーの運転手になり、一時は月給60万をもらっていたこともある。その後、実家の仕事を手伝っていたが、仕事があまりなかったので再び家を出て派遣社員として働くことにした。インターネットで見つけた日産ディーゼルの仕事の時給は1200円。他の製造業派遣に比べれば条件が良かったし、寮つきというのも魅力だった。

「派遣会社の人からは『1年ぐらいは働けるよ』と言われていたので、俺もそのつもりだったんですけどね……」

   働き始めた9月は忙しく、残業もあった。しかし10月になって風向きが一気に変わった。ラインのスピードが落ちただけでなく、午前中だけ作業をして午後はラインが止まる日もあった。11月になると、さらにラインのスピードが落ちた。

   「これはまずいな」と思った荒井さんは、平日の夜や土曜日にガソリンスタンドでアルバイトをすることにした。派遣社員の契約期間は1月末まで。それから先は更新されない可能性があると考えたからだった。

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