あらかじめ「投資金額の限界」を決めておこう
運転資金で重要なのは、用意できる資金の中から事業へ投入する金額をいくらまでにするかをあらかじめ決めておくことだ。というのは、事業の採算性や仕事のやり方自体に問題があるのに、「もう少しがんばれば、もう少しやればなんとかなる……」と自分を励ましながら、お金が底を尽くまでやり続けてしまうケースが少なくないからだ。独立してお金で失敗すると、仕事どころか、人生のやり直しさえも大変になることがあるから、注意してほしい。
企業であれば、採算がとれない新規事業はテコ入れをして、それでもダメなら撤退という判断をくだす。お金は、利益を生み出すことに使わなければならない。しかし、個人事業主の場合、そのような冷静な経営判断を、自分自身に対してくだすことはとても難しい。
全力でやっても、期待した成果と大きくかけはなれた場合は、対策を考えたり、やり方を変えたりすることが必要になる。あらかじめ自分へ投資する金額のリミットを決めておけば、深刻な事態へ陥る前に、立ち止まって考える機会も持つことができる。
場合によっては、事業をあきらめることが最良の選択ということもある。ただ、その見極めはとても難しいのが現実だ。成功した人はみな、口をそろえて「あきらめずにやり続けたから」と言うからだ。
しかし、すでに何回も書いているように、個人事業で5年、10年と継続できる人は驚くほど少ない。窮地に立ったときに自らを客観的にみつめる勇気と、事前に投資金額の限界を決めておくという知恵をもってほしいと思う。
塚田祐子