誰しも、陽の当たらない仕事ばかりをやりたいとは思いません。しかし、最初から大きな仕事、カッコいい仕事にありつける人もいません。いま華やかな仕事をして活躍している人も、きっと下積み時代に雑用をしています。今回は、大きな仕事、カッコいい仕事に辿りつくための雑用について考えます。
雑用は、仕事への姿勢を見る「試験」のようなもの
入社したての新人や未経験者は、最初のうちは使い物になりませんから、仕事らしい仕事をさせてもらえないことが多いでしょう。初歩的な定型業務や、上司や先輩からその場で頼まれる雑用をこなすことが役目になります。
最初のうちは、それを処理することで精一杯ですが、慣れてくるにつれて「こんなことやるために会社に入ったんじゃない」と思うようになります。そういう気持ちで悶々と過ごしている人は多いでしょう。私も経験があるので、とてもよく分かります。
私はかつて、1年以内の退職を繰り返していました。転職するたびに雑用ばかりやらされて、「面倒くさいしやりたくないな」と嫌になって辞めていたわけです。前職に採用になった28歳の時点でも、ほとんど未経験者と同じスキルだったので、やはり雑用から始めざるを得ませんでした。
しかし、そのころまでには、少し成長していて「結局どこへ行っても雑用は付いてくる。これは試練だ」と考えられるようになっていました。雑用は、その人の仕事への姿勢を見るための試験のようなもので、小さな仕事も満足にできない人に大きな仕事を任せることはできないということに気づきました。周囲の人は、あなたが雑用をしっかりこなすのを確認することで、安心して仕事を任せることができるのです。
「どのような意識で取り組むか」で得られるものが変わる
それでも雑用に対してネガティブな見方が消えない人は、このように考えるといいのではないでしょうか。
「こんな簡単な仕事で給料がもらえるなんて、ありがたいよな」
いつまでもこんな考えでは良くないですが、まずは自分にとってプラスに思えるように、こじつけてみることです。いずれ訪れる大きな仕事のチャンスまで、目の前に与えられた仕事をマスターすることを心がけましょう。
なにしろ、小さな仕事は「どのような意識でその仕事に取り組むか」によって、得られるものがずいぶん変わってきます。私が経験した雑用の1つに、部内の郵便物を宛先別に分けて配布するという仕事がありました。最初は分からないことばかりで、何も考えずに分けて配っていたのですが、そのうち「人事に関する仕事にも、いろいろな業者さんがいるんだな」と思うようになりました。
そして、面白そうな会社のウェブサイトを調べてみたり、特に興味のあった会社には自分から連絡して担当者にこっそり来てもらったりしていました。そうすることで視野が広がり、知識も増えていきました。最初の雑用を、単に「郵便物の配付」としてしか考えていなかったら、得るものは少なかったと思います。
雑用経験は「将来のリーダー」にとって欠かせない
部署内で誰かが忙しそうにしていたら、自分から進んで雑用を引き受けましょう。雑用であれば、凡人にでもすぐできるはずです。「こんな仕事もあるのか」と新たな気づきを得られるでしょうし、部署内の仕事を把握するには効果的です。
一緒に仕事をすることで、人とコミュニケーションが生まれ、いつかあなたが困った時には助けてくれるかもしれません。仕事は一人でできることは、たかがしれています。相互扶助の精神で、お互い助け合っていきましょう。このようなスタンスでいると、あなたの味方が増えて仕事もやりやすくなります。
『クビ!論』で有名な梅森浩一氏は、著書『ボスと上司』の中で雑用――彼の言葉でいうと「クソな仕事」――の効果を、次のように述べています。
「あなたのことを本当に一人前にしようとしている「上司」なら、かならず「クソな仕事(汚い表現ですがご勘弁ください)」をさせるはずです。なぜなら、…仕事というのは実際にやってみればなんのことはない、その99パーセントがクソな仕事の積み重ねですから、将来人の上に立つリーダーのあなたが、そのことを知らずしてちゃんと会社(組織)を引っぱることなど不可能だからです」
このように、雑用経験は、将来のリーダーにとって必要なことです。部下の仕事が分からないと指導もできませんし、部門の仕事も管理できません。突出したスキルのない凡人は、雑用を積み上げていってこそ大きな仕事にありつけることを念頭におき、昇進・昇格する手段と考えるのもいいかもしれません。そういえば天下人・豊臣秀吉も、織田信長の草履取りから出世したのではなかったでしょうか。
野崎大輔