わが社セレンは農業支援のコンサルタント会社として、安全で美味しい野菜が日本全国に広まるように知恵を絞っている。セレン代表の三輪晋が薦める「土ごと発酵」で農作物を作ると、肥料は減り、農薬もほとんど使わなくなる。だから低コストで高収量、高品質の野菜ができる。農家にとっては一石三鳥となり、「儲かる農業」が実現できるのだ。
「これからの農家はGAPです」
農家は「安心して食べられる農作物を」という消費者の声に応えていかなければいけない
でも、いくら低コストで高品質の野菜を大量に生産しても、販売に繋がらなければ売上は伸びない。では野菜を販売する上で何が重要なのか。鮮度を保つためにはどんな梱包資材を使えばいいのか? 流通にはどんな工夫が必要なのか?
そんなことを調べているとき、著名な食品衛生コンサルタントの方とお話する機会を得た。
「食品販売、特に野菜の販売で気をつけることは何ですか?」
そうたずねると、当初の想定と違う意外な答えが返ってきた。
「GAP(ギャップ)です」
GAP? あのアメリカンカジュアルの洋服会社のこと? 野菜を販売するときはGAPを来て、カジュアルらしさをアピールしろってことか? もちろん、そんなわけはない。
「GAP」とは、Good Agricultural Practice(適正農業規範)の略称。農業の生産現場で、食品の安全確保などに向けた適切な管理のポイントを整理するとともに、それを実践・記録する取り組みのことをさす。ISOの農業版といえば、分かりやすいだろうか。
すでに第二次産業の食品製造業などでは、「GMP」Good Manufacturing Practice(適正製造規範)が導入されている。この【Manufacturing】が【Agricultural】になったのが「GAP」というわけだ。
また日本の食品メーカーでは、食品の製造工程で危害を起こす要因(ハザード:Hazard)を効率よく除去するための手法「HACCP(ハサップ)」や、食品の安全管理に関するマネジメントシステムの国際標準規格「ISO 22000」などの導入が当たり前になっているが、密閉された工場の環境とは違い、開放的な自然環境の中で農作物を作る農業では「HACCP」や「ISO」の導入はできないという。そこで、「農業の場合はGAP」ということになるのだ。
ヨーロッパから広まった消費者保護の仕組み
農業現場のためにある管理手法であるGAPはもともと、ヨーロッパの小売業者が消費者の声を代弁して、農家(=生産者)にこの仕組みの採用を求めたのが発端といわれる。そのような農業のための管理手法をまとめた「ユーロGAP」は、ヨーロッパではいまや当たり前の取り組みとなっているそうだ。
日本でも、わが国独自のGAP、すなわち「JGAP」を整備していこうという動きが徐々に広がっており、民間の認証団体がいくつかできている。JGAPでは、たとえば、次のようなことが求められる。
・牛舎に行った同じ長靴で畑には入らない。
・収穫の前に手を洗う、手袋をする
・いつ何の肥料を畑にあげたか記録をつける
このようなことを各農家がマニュアル化して記録し、検証するのだ。工場などで食品生産のお仕事をされた方なら当たり前のことかもしれない。
だが、農業では作業マニュアルなどが整備されている農家はいまのところ少ない。GAPの導入率も現在は、全農家の5%未満ではないかと見られている。
しかしこれからは外食産業やスーパー、食品加工工場などが、トレーサビリティの観点から農家に対して栽培記録や生育記録を求めてくることが考えられる。今はまだまだ知られていなくてもあと5年もすれば、「GAP」を実施していないと売れない野菜になってしまう可能性もある。
安全なところに注文が集まる時代。農家にも、安全管理と情報公開が不可欠となる時代が近い将来やってくる。食に対する消費者の意識は刻々と変化しているのだ。
セレン社長秘書 大倉野あやか