リーマン・ショックをきっかけにした世界同時不況で企業の倒産が激増している。「あの取引先は大丈夫か?」「うちの会社は安泰なのか?」と疑心暗鬼にとらわれているサラリーマンも多いだろう。そんな要請に応えるように、帝国データバンクが最新の倒産事例を検証した書籍『会社はこうして潰れていく』が出版された。そこで明らかにされた大型倒産の実態や危ない会社のチェックリストからは、「つぶれそうな会社」の後ろ姿が見えてくる。
有名企業がなぜ倒産したのかを検証
最新の倒産事例には「つぶれる会社」を予知するヒントが隠されている
1900年の創業以来、国内随一の民間信用調査機関として数多くの倒産劇をウォッチしてきた帝国データバンク。倒産ラッシュの様相を呈している昨今の情勢を受け、2009年1月、『[緊急版]会社はこうして潰れていく』と題した実用書を中経出版から世に出した。
苦境にあえぐ不動産業界の象徴的な倒産といえるアーバンコーポレイションや、リーマン・ショック以後の金融機関破綻として注目を集めた大和生命保険、史上まれに見る迷走劇の末に倒れたノヴァ(NOVA)など、最近の倒産事例を数多くあげて、なぜその会社が倒産に至ったかを検証している。
「企業調査の第一人者に倒産の現場レポートを書いてもらった。リアルな事実を淡々と伝えることで、会社がつぶれるというのはこういうことだと、読者のみなさんに追体験してもらおうと考えた」
と、中経出版の編集担当者は出版の狙いを語る。
最近の倒産は、業種や規模を問わず広い範囲で発生しているのが特徴だが、特に、「新興不動産業者」「ゼネコン」「金融機関」「ベンチャー企業」での倒産が目立つということで、これら4業種の倒産事例を紹介して「なぜつぶれたのか」を伝えている。
また倒産原因に着目すると、目につくのが「原材料高」「コンプライアンス・リスク」「粉飾決算」「再生バブル斜陽」といった要因による倒産だ。たとえば、2008年10月に経営破綻したディスカウントショップ経営の関善は、粉飾決算のために民事再生ではなく破産に追い込まれたケースとして紹介されている。
「危険度判定シート」で気になる会社をチェック!
巻末の「危険度判定シート」には99のチェック項目が列挙されている
この本を手に取った読者は、それぞれの関係する業種に応じて、興味のある倒産事例を「つまみ読み」するだけでも十分に参考になる。だが、巻末につけられた「危険度判定シート」はどの業種でも使える、汎用性の高いチェックリストだ。
これは元来、取引先の信用度を確認する際の指標として作られたものだが、サラリーマンにとっては、自分の会社の危険度をはかるチェックリストとしても使えそうだ。チェック項目は全部で99あり、「社長・役員」「従業員」「商品・技術・サービス」「財務・資金繰り関連」「その他」の5分野に分かれている。
たとえば、次のような項目にチェックがたくさん入る会社は注意したほうがいい。
(1)社長・役員が不在のことが多い
(2)有能な幹部が退職している
(3)経理担当者が不在がちだったり退職している
(4)在庫に極端な増減がある
(5)過度な安売りをしている
(6)売上高の横這い・減少が3年以上続いている
(7)不動産の担保権者に個人名が入っている
(8)事務所やトイレが清潔ではない
(9)会議が急に多くなっている
(10)規模のわりに子会社(関連会社)が多すぎる
(11)イメージ先行型の社名変更が頻繁にある
(12)極端な秘密主義である
「このチェックリストはおおざっぱな項目を示すものなので、あくまでも目安の一つとして考えてほしい」
と中経出版の編集担当者は語る。たしかにこれらの項目に該当したからといって、すぐに倒産するというわけではないだろう。だが、自分の中に「要注意フラグ」を立てるきっかけとしては活用できそうだ。