マネジメントを機能させるには「熱い職場」が必要だ
ところで、連載に当たり「職場活性化」の考え方を確認しておきたい。この不況下で誰もが途方に暮れているのは、これまで成果を上げてきた「開発」や「販売」の方法論では、全く太刀打ちできなくなっているからだ。売れるサービスをいかに開発するか、商品をいかに売っていくか、誰もが「方法論」に行き詰まりを感じている。
私が考える「職場が活性化された状態」とは、職場のメンバーが活発にコミュニケーションを取り、知恵を出し合って、状況を打開する「方法論」について自由闊達に議論し、実行をトライし続けている状態を想定している。単にワイワイ盛り上がっているだけでは、もの足りない。
めざとい大手企業は潮目の変化に敏感に対応し、社内研修のマネジメント講座の内容を、従来の「数量管理」から、「コーチング」「ファシリテーション」「メンターシップ」といった手法へとシフトしている。こういった研修プログラムは、実施した方がいいに決まっているのだが、そのベースのところで(特に秀才の幹部候補たちに)あまり知られていない現実がある。
それは「部下との冷ややかな人間関係の中では、どんなに素晴らしいマネジメント手法を研修で学んでも、全く機能しない」ということだ。たとえば「仕事ができるから期待する」「仕事ができないから期待しない」というマネジメントの“常識”が、実は職場活性化のボトルネックになっていた、というようなことが起こりうる。
職場を活性化するためには、仕事ができるか否かの前に、まずはメンバー一人ひとりの「人間としての価値」を認めることが不可欠である。もちろん業績が低ければ、人事考課は低い評価となる。しかし、評価は低くても、努力を怠らずに本気で取り組んでいる価値を認めた上で、言葉にしてその本人や周囲に返していくことが、活性化した職場の空気を醸成することを忘れてはならないのである。
大塚 寿