モンスターペアレントやモンスター患者など、苦情をぶつけて人を困らせるクレーマーが増殖中のようだ。あなた自身、クレーマーに遭遇することがあるかもしれない。そんなときは問題が解決した「後」のことを考えて対応することが大事、と説くのは『となりのクレーマー』(中公新書ラクレ)を著した関根眞一氏。大手百貨店のお客様相談室長としてクレーマーの対処法を学んだ彼は、「苦情処理のゴール」について次のように語る。
苦情処理の「ゴール」を明確にするのが大切
クレーマーには気を付けろ
苦情処理に欠かせないのが、「何をもって苦情処理のゴールとするか」という認識でしょう。ゴールは企業ごとに異なるし、場合によっては部門ごとにも異なることもあります。いずれにせよ、ゴールを確実に決め、これを目指して取り組むことが大切でしょう。
百貨店の場合は、「お客様を離さないこと」だと私は考えています。苦情を解決するだけではいけないし、お客様の満足感を向上させるだけでもいけない。再び来店いただいて、初めて成功となるわけです。
たとえばバッグが壊れたとします。なにしろ大枚はたいて買ったばかりのバッグです。買った顧客は、お店に怒鳴り込んでくるかもしれない。店側では、丁重に対応し、バッグを修理する、または交換する。
これで、バッグは元に戻ったが、顧客の心の痛手は治っていない。これを処置しなければ、その顧客を失ってしまいます。顧客がこれから購入するであろう数百万さらには数千万の売り上げを、他店に取られてしまうかもしれません。
そこで、誠意と真心を込めて対応し、心のしこりを取り除き、満足してもらいます。
これでも、ゴールではありません。店員を怒鳴ったりしたものだから、また来るのが恥ずかしいのです。その恥ずかしさをも取り除き、再度来店していただいた時点で、ゴールとなるのです。
「とはいえ、来店したそのお客様を見つけても、喜び勇んでお迎えしたら、やはり気恥ずかしさが先に立ってしまいます。必ず声をかけられますから、それを待って、前回のお礼も述べるのです」
そのように私は説いている。これほど接客は、奥が深いのです。
(関根眞一『となりのクレーマー』〔中公新書ラクレ 158頁~159頁〕より)
(会社ウォッチ編集者Sのひとこと)
クレーマーになりうるのは顧客だけではない。上司、同僚、恋人、家族。彼らが突然、あなたに理不尽な要求を繰り出す日が来るかもしれない。自分はそのときどうするのだろう?と考えたときに、実例を豊富に挙げて対処法を説明するこの本はひとつの参考になるかもしれないなぁ、と感じる。