ニートにはアニメやマンガが好きな人が多い――そんな傾向に目をつけた愛知県の若者向け就職支援センターが、PR活動に「萌えキャラ」を使用して話題になっている。美少女キャラに惹かれて県外から訪れる人もいるなど、反響は上々だ。
清楚でかわいい22歳の新入女子社員「知多みるく」
美少女キャラが「萌えろ就職活動」とメッセージを送る
愛知県の知多半島にある半田市の「ちた地域若者サポートステーション」は2009年1月、施設のPR役に美少女キャラクターを採用した。キャラの名前は知多半島で盛んな酪農にちなんで「知多みるく」。22歳の新入社員という設定で、身長158cm、趣味はボランティア、学生時代は吹奏楽部に所属していたという。清楚でかわいい、いわゆる「萌えキャラ」だ。
「地域若者サポートステーション」は、厚生労働省が各地域の民間団体に委託して運営している若者向けの就職支援施設。全国に77か所あり、それぞれの地域で15歳から35歳までの「働きたくても働けない」若者を対象に、「職業的自立」に向けた相談やセミナーなどを行っている。
なぜ、就職支援施設で「萌えキャラ」なのか。ちた地域若者サポートステーションを運営するNPO法人エンド・ゴール代表の大久保智規さんは、「地域若者サポートステーションが意外と知られていないのが悩みでした」とした上で、次のように語る。
「地域若者サポートステーションは、主にニート状態の人が対象なのですが、そういう方にはアニメやマンガが好きな人が多かったんですね。雇用情勢が悪くなってきたので、もっと多くの人に活用してもらいたいと思い、そうした人たちの目を惹く何かを考えたら『萌えキャラ』ということになりました」
「知多半島やっちまったな」
知多みるくのブログは「今日は節分ですね」「風が強すぎる~」といったホノボノした話題が多い
大久保さん自身も元来アニメなどに造詣が深く、アニメ・マンガから学んだという人生哲学をまとめた書籍も出版している。相談にきた若者には、アニメなどの話題から入って心を開いてもらうこともあるという。
この知多みるく、登場早々、地元紙に取り上げられたほか、ネットメディアでも紹介された。ネットでは、
「知多半島やっちまったな」
「とうとうウチの地元にも"萌え"の波が押し寄せてきたのですねぇww」
といったコメントが掲示板やブログに書き込まれたが、おおむね好意的に受け止められているようだ。その一方で、コアなアニメファンからは
「惜しい 22歳はアニメの世界では、萌えキャラではなく。おねーさまキャラ」
といったコメントも。知多みるくのデザインについては、大久保さんは次のように説明する。
「本当に『萌えキャラ』にすると、どうしても『幼女系』に寄ってしまうのですね。ですが、この施設は相談に来る若者だけでなく、その保護者も来るので……。なので、清楚でかわいいキャラを描ける人を探していたら、鉄道会社などのキャラも手がけているイラストレーターの宙花こよりさんを見つけまして、お願いすることにしました」
知多みるくのおかげで相談「50%増」
知多みるくが登場してから、サポートステーションに変化はあったのだろうか。
「知多みるくを知って、わざわざ岐阜県などの県外からサポートステーションの様子を見に来る人もいましたね。現在、常時2名程度のカウンセリングスタッフがいるのですが、それまでは、1人1日5名程度の相談にのっていたのが、現在では1日7名ほどになっています。50%増しといったところでしょうか」
と、大久保さんは話す。「萌えキャラ」はサポートステーションの知名度アップに確実に貢献しているのだ。
知多みるくのデビューにあわせて、ブログ「みるろぐ」もスタート。こちらでは、「就職に困ってる方がいたらぜひ相談に行ってみてください☆私も応援してます!」とサポートセンターをPRしているほか、「愛知県知多半島のイメージキャラクター」として、中部空港のイベント告知も行うなど、ますます活動の幅を広げている。
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