会社をやめて独立したときに必要なモノとして、前回や前々回のコラムで、「仕事を取る力」や「利益を生み出す力」について説明してきた。実はもう1つ、必要不可欠なモノがある。それは「何があっても落ち込まない思考回路」だ。
独立したら「落ち込まない復元力」が不可欠だ
「独立に向くタイプとは?」と聞かれたら、私は一番に「切り換えが早い人」をあげたいと思う。仕事が思うようにいかなかったり、人間関係で悩んだり、予期せぬトラブルを抱えて思いっきりテンションが下がったりしたときに、いかに早く気持ちを切り替えて次のアクションへ移れるか。この切り替えがなかなか難しいのだ。
自営で仕事をしていくと、常に悩みはつきない。独立当初は、描いたプランと現実とのギャップに戸惑ったり、先が見えない不安におそわれることがある。そんなとき、必要以上に考え込んだり、精神的な負担を感じてしまう人は、いくら能力や才能があっても気持ちで負けてしまうことがある。
物事をどう受け止め、どう感じるかは、人それぞれ違うし、その人の持って生まれた性格に根ざすものなので、簡単に変えることはできない。そのため、自分が独立して実力を発揮できるタイプなのか、会社の中にいて力を発揮できるタイプなのかを見極めておくことも重要になる。
ベストセラー『鈍感力』を書いた作家の渡辺淳一氏は「鈍感力とは基本のところで鋭敏さや見識を持ち、その上で能力をさらに伸ばす推進力、あるいは落ち込まない復元力のこと」と述べているが、会社に属さないで生きていくには、この「落ち込まない復元力」がより必要になる。
問題を抱えて困ったときが成長するチャンス
自分が置かれている状況に不満があっても、サラリーマン時代は、妥協することが処世術だったりもする。しかし独立したら、自分が望まない状況に身を置いていることについて、会社のせいにも上司のせいにもできないし、ましてや時代や不況のせいだと言っても何も解決しない。
自分を取り巻くマイナスの状況は、自分で打開していくしかない。何が起きても、落ち込んだり、自信を無くしている場合ではなく、すぐに頭や気持ちを現状を打開する方向へ向けて、解決策を考えていかなければならない。
この切り替えを、なるべく早くするように努力し続けると、頭の中では「落ち込まない思考回路」ができあがっていく。そうすると、くよくよ悩んだり落ち込んだまま思考停止していた自分が、前向きな行動を取れるようになっていく。
事業の成長は、自分自身の成長の結果によってもたらされるが、独立すると、自分で自分の思考パターンやワクを超えて成長していくことが難しくなる。実は、独立した者にとっては、問題や課題を抱えて困ったときこそが、自分を成長させるチャンスだといえる。目の前に現れた壁が、成長の階段のワンステップになっていくのである。
独立したら、この成長の階段を1つ1つクリアしていくことを、ぜひ楽しんで欲しいと思う。
塚田祐子