従来の「ボーナス至上主義」は消えつつある
高収入で知られる外資系金融機関ですが、それはひとえにフロント(直接収益に貢献する部署)のボーナスの大きさによります。特にトレーダーなどはうまくいけば個人の力で何億円、何十億円と会社を儲けさせることが可能ですから、それに応じて成功報酬(ボーナス)も何千万さらに億の単位になるのです。M&Aの場合なども手数料が売買価格のパーセンテージで決まるので、大きな案件を成就するとすごいボーナスが支払われます。フロントの人間ががむしゃらに働くのは一にも二にもこのボーナスをたくさんもらうことにあるというわけです。
一方で、管理部門で働く人にはそれよりずっと小さい金額しか出ません。管理部門の人間にとってボーナス支給日というのは自分がフロントと身分差別されていることを年に一度確認する日でもあるのです。
しかし、サブプライム以降は状況が大きく変わりつつあります。バブルがはじけたため大きく儲けることが難しくなりましたし、そもそも会社全体の業績が悪いためボーナスのための資金が大きく減りました。クビ切りも増えている、という三重苦の状況です。
そのため今までのようなボーナス至上主義は消えつつあり、代わりに基本給と雇用の安定に注目が移ってきました。フロントの人間の中には少し前までほとんど気にも留めていなかったのもたくさんいたわけですから、これは大きな変化です。
我が世の春を謳歌してきた外資系金融マンの時代は終わりつつあります。「普通のサラリーマンに戻りたい!」。これが彼らの新しい合言葉なのです。
益村誠一郎