物事を後ろ向きに考えても、成果は出ない。「ポジティブ・シンキング」が大切だ――。頭では分かっていても、なかなかできるものではありません。でも、前向きな姿勢を見せる人には、チャンスが訪れるものなのです。凡人は開き直って、粘り強くいきましょう。
ポジティブは「粘り強さ」や「責任感」にも通じる
人事評価シートに「困難な状況においても粘り強く仕事を進める」という項目のある職場は多い
「ポジティブ・シンキング」とは、一般に「どんな状況でも物事を前向きに、積極的に考える」という意味で使われています。「それって問題が見えてないバカじゃないか」「仕事ができればネガティブでも関係ない」と言う人もいるでしょうが、ポジティブだから重要な仕事を与えられる、という側面もあります。
ポジティブ・シンキングには、失敗や困難にめげずに仕事を進める「粘り強さ」や、自分の役割を認識してベストを尽くす「責任感」に通じる要素があります。日ごろから明るく前向きに仕事している姿を見れば、過去の実績や能力を少し度外視しても、熱意や可能性に賭けてみようか、と周囲に思わせることができるのです。
また、ポジティブ・シンキングができる人は、他の従業員とのコミュニケーションを上手に取ることができます。メンバーと励まし合ったり、他人の失敗をフォローし合ったりできる人は、組織やプロジェクトで重宝されます。
しかも、最近の会社の人事評価では、勤務姿勢の比重を高める動きがあります。これは、会社が成果主義の問題点を修正するために、チームワークを重視し始めていることに関係があります。
「ネガティブ・シンキング」な勤務態度が悪いとは言い切れませんが、ポジティブで周囲を明るくし、粘り強く仕事をする人は「できるヤツ」と歓迎されるものです。私も人事の立場で、そのような人たちを多く見てきました。
成し遂げようとする意欲は「開き直り」から
それでは、ポジティブ・シンキングを自分のものにするためには、どうすれば良いのでしょうか。私は以前、仕事に対して意欲もなく、消極的な男でしたが、ある日を境に変わりました。そのきっかけのひとつは「開き直り」だったと思います。
私は、前の会社に入社するまで大したスキルも身につけておらず、仕事はほとんど未経験のものばかりでした。入社当初は慣れない仕事に時間がかかり、本当に憂鬱な日が続きました。しかし、あるとき「開き直り」の境地に達しました。
「いまできないのは仕方がない。これからは、自分を広げる経験をするのだ」
それまでは「なんでできないんだろう」「こんなことやりたくない」と気に病んでいましたが、「これまでやったことがないんだから、最初はできなくて当たり前だ」と考えを切り替えられるようになりました。そして、それを繰り返すうちに「自分の手に負えない問題は起こらないものだ」と学習しました。
ある時、自分の提案が会議で承認されて、取締役から主担当を任命されました。自分が言い出したこととはいえ実現できる見通しもなく、社内で初の試みなので相談する人もいません。正直「これはピンチだ」と困ってしまいました。
しかし、「自分の手に負えない問題は起こらない」という言葉を思い出し、喜んで引き受けるべきだと考えを変えました。上司からも「本当に大丈夫か?」と心配されましたが、「自分にとってチャンスですから、頑張りますよ!」と強がってみました。
性格は変えられない――前向きに「見せる」ことが大事
このことで、私は周囲から「ポジティブ・シンキングな人」と見られるようになり、その後も会社初の仕事を任されるようになりました。「相談する人もいないピンチ」を、無理やり「手柄を立てるチャンス」に考える姿勢が身についたおかげです。
こう考えると、「ポジティブ・シンキング」とは、何かを成し遂げようとする「意欲」と言い換えることができるのではないでしょうか。意欲が沸きやすい条件というのもあるかもしれませんが、結局は自分のやる気です。状況は困難でも、どうせなら腹を括って「やってやろう」と考えた方が楽しいですよね。
ただし、自分本来の性格を全く無視して、何でも前向きに考えようとしても無理が出ます。そのことでストレスを溜め、うつ状態になることを「ポジティブ・シンキング症候群」と言うそうです。無理に性格まで変えようとする必要はありません。周囲に前向きに「見せる」ことが重要ですし、疲れが溜まったら十分休養して英気を養ってください。
野崎大輔