部下に仕事を与えたとき、同じ仕事でも人によって完成度に違いが出ることがあります。これは、部下の特性によって「得意・不得意」があるためです。もし、あなたの部下に「シュガー社員」がいたら、これまで説明してきた「5つのタイプ」をおさらいしながら、特性に応じた仕事の与え方やポジションについて見直しをしましょう。
1. 「ワンルームキャパシティ型」には単純作業が向く
自分の頭で考える仕事が苦手、それでいて「私は十分ちゃんとやっているはず」と勝手に思い込んでいる「ワンルームキャパシティ型」の場合も、「もっと力をつけてほしい」「成長してほしい」と考える上司との間で必ず摩擦を起こします。
「いままでの経験をもとに自分で考えてやってみて」と仕事を振ってみても、不可思議な判断基準で仕事を進め、とんでもない方向に行ってしまうことがよく起きます。しかし、本人にしてみれば「自分なりに」一生懸命やっているので、なぜ注意されたり叱られたりするのか分かりません。
そもそもこのタイプは、「成長して欲しい」という上司の願い自体を苦痛に感じるわけですから、摩擦を避けるためには「今のままでよし」とすることでしょう。マニュアルに沿って、右から左へ流す単純作業をキッチリしてもらうのが賢明です。
2. 「私生活延長型」は責任の小さいポジションに置いておく
プライベート最優先で、仕事は半人前だが自分の権利には強い執着心を持っている「私生活延長型」は、アフター5の充実が重要なので、残業や休日出勤などはもってのほかです。重要な仕事やスポットライトの当たる仕事を好みません。
上司が「仕事の面白さを分かってほしい」と願うあまり、重要な仕事を任せることもあるでしょう。そのとき結果がでなかったら、伸びる社員なら「悔しい」「今度こそ」と思うものですが、このタイプは「こんな仕事を任せる方がどうかしている。任せた上司が悪い」と反発します。
このタイプは、そもそも「責任感」という言葉に嫌悪感を抱いています。「私生活のために仕事している」「仕事のために休日に読書するなんてあり得ない」と公言しつづけるようなら、誰にでも代わりができる責任の小さいポジションに置いておくのが得策です。
3. 仕事から逃げる「プリズンブレイク型」に放置プレイは禁物
「苦手な仕事」や「苦手な人」が多く、気が進まないことからはトコトン逃走する「プリズンブレイク(脱走)型」。仕事の途中で分からないことが生じても、誰かが声をかけて教えてくれるまで放っておくので、土壇場で慌てることがしばしばです。
このタイプは、上司が先回りして進捗状況をこまめにチェックすることが必要です。「いつまでに」という期限を具体的に示し、放置しないように確認してください。ただし、仕事の締切りを単純に早めさせても「本当は急ぎじゃないんでしょ?」と見破られますので、全体の工程を考えた上で適切な締切りを設定しましょう。
4. 「俺リスペクト型」には目立つ仕事をどんどん与えよ
「俺リスペクト型」は、「私生活延長」型や「ワンルームキャパシティ」型とは対照的に、単純作業を嫌ってスポットライトの当たる仕事を好みます。しかし「自分はこんなところにいる人間ではない」と不満を漏らす割には、仕事の完成度が高くありません。
このタイプには、目立つ仕事をどんどん与えてみましょう。ただ「そんなに自信があるなら一人でやれ」と与えっぱなしは禁物です。実際の能力と自己評価との乖離が大きいタイプなので、「ワンルームキャパシティ型」のようなマニュアルを用意し、「プリズンブレイク型」のように先回りして情報を与える配慮が必要です。
また、完成度が低かったからといって、「これじゃあダメだよ」と本人のプライドを傷つける発言は、くれぐれも控えて下さい。「ここは良かったけど、ここがまずかった」と、細かく具体的に評価して指導してあげて下さい。
5. 親が口出す「ヘリ親依存型」には特性にあった仕事を
「ヘリ親依存型」で最も多いのが、「残業」に対する親からのクレームです。仕事ですから日によっては就業時間内に終わらないこともあるのですが、大企業出身で経済的に豊かな親が「うちの子に遅くまで仕事させるなんて、上司の指導力のない証拠だ!」などと、痛いところを突いてきます。
このタイプは、仕事を一生懸命やるというよりは、名のある会社に所属して美味しいところだけ享受したいと考えているので、どんなに指導しても効果が上がりません。とはいえ、親のコネで入社しているケースなどは、上司の一存では解雇も難しいでしょう。
この場合、親のクレームを本人に話して、その反応で本人のタイプが「正常」なのか、どのタイプの「シュガー社員」なのかを見極めた上で、特性に合った仕事を与え、必要があれば定時に上がってもらうしかありません。
できない社員にできないことを無理に要求することは、必要以上に摩擦を生み、まともに働く社員のモチベーションを大きく下げることになります。消極的な意味で「適材適所」にならざるを得ません。
これに併せて、賃金体系も見直しが必要です。十分な検討もなく、年功序列的な制度の運営を放置していては、危険が伴うことになります。「生活」と「労働」は切り離せないものではありますが、いつまでも同じ仕事しかできない社員を毎年昇給させていっては、会社は存続できないからです。
田北百樹子