前回のコラムで、「独立1年目」を乗り切るために必要なモノについてお話したが、いいスタートが切れても継続できなければ意味がない。大事なのは、事業をいかに継続させていけるかにある。では、継続していくために必要なモノとはなんだろうか。
求められるのは「利益を生み出す力」
独立しても、仕事が取れてそれなりの売上があれば、何とか1年目をクリアすることはできるだろう。しかし、売上を見ているだけでは不十分。事業にはかならず経費がかかる。売上から経費を引いた残り、すなわち「利益」が重要だ。いくら売上が上がっても、稼動に対して適正な「利益」が得られていなければ、事業を続けていくことは難しくなる。
サラリーマンならば、担当する仕事をキチンとやっていれば、毎月お給料が銀行口座に振り込まれる。給料を支払うためにどうやって収益を上げるかは、経営サイドが考えることになる。しかし、独立すると、自分の収入がいくらになるかは、自分自身の仕事のやり方ひとつにかかってくる。
独立して事業を継続していくためにまず必要なことは、手足を動かして一生懸命仕事をすることではない。重要なのは、継続するために必要な「利益」をどうやったら効率的に稼ぎ出していけるか、その方法をよく考えて、実行することだ。
つまり、「利益を生み出す力」が要求される。
独立すると「口座に振り込まれるお金」の意味がかわる
仮に、独立前の給料の手取り額が30万円だとしよう。銀行口座に毎月振り込まれる30万円は、すべて自由に使えるお金になる。では、独立するとどうなるか。
同じ金額30万円が口座に振り込まれても、これは「売上」にすぎない。サラリーマン時代と同じ感覚で使っていったら、赤字になってしまう。売上には経費が含まれているからだ。個人事業の場合は、売上から経費を引いた残り、つまり「利益」が事業主の所得になる。会社から独立すると、その利益から税金や保険を支払うことになる。その金額は利益の約40%にもなるため、独立前の生活レベルを維持しようとすると、少なくとも独立前の手取り額の2倍以上の売上が必要だ。
このように、自分が望む利益を確保するには、いくら経費がかかり、いくら売上をあげたらよいのか。そのためにはどういう企業や顧客と取引し、どういう仕事をしていったらよいのか、というふうに具体的にシミュレーションしておかなければいけない。つまり、利益計画や売上計画を練ることが重要なのである。
たとえフリーや1人ビジネスであっても、事業をスタートさせる前には、事業プランやビジネスモデルの組み立てをやっておきたい。この作業をすることで、給料をもらう立場から事業主へ意識が切り換わり、「利益を生み出す力」を養成することができる。
自ら赤字体質をつくるな!
利益を確保するために重要になるのが、自分の値段、つまり仕事の値決めである。仕事を発注する企業サイドにはより安いコストで外注先を使いたいという考えがあり、立場的には発注する企業のほうが強いので、実際には取引先の予算に合わせることが多い。しかし、それを仕方ないと考えて弱い立場に甘んじているだけでは、売上はいつまでたっても取引先にコントロールされることになってしまう。
また、不景気だから、競合がたくさんいるからと、安易に自分の値段を低くしてしまうと、仕事が増えても、利益が出ない「赤字体質」を自ら作ってしまう。赤字でも、入金と出金のタイミングを合わせていければ、自転車操業でなんとか回していけるが、売上がストップした瞬間に、借金を抱えることになってしまう。
繰り返しになるが、独立した後、事業を継続していくには、利益を確保すること。そのために仕事のやり方を考えること。これこそが、事業主に求められる「仕事」になる。それを怠らない事業者のみが、生き残っていける。
塚田祐子