「二度と経験したくない」つぶれる会社の空気

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「沈みゆく船」に残された者たちの悲惨

時間だけがどんどん過ぎていく。終わらない仕事が続く……
時間だけがどんどん過ぎていく。終わらない仕事が続く……

   去っていく者には新しい世界が待っている。しかし、残された社員たちは"沈みゆく船"に留まって、彼らの分まで仕事をこなさなければいけない。二重の意味で悲惨なのだ。

   サポートセンターのマネージャーだったTさんの業務量は日を追うごとに増えていった。コストカットのため"派遣切り"をしたおかげで、30人ほどいたサポートセンターの部屋は廃墟と化し、代わりに残った5人の社員が約2万人のユーザーを相手するはめになった。

「役員が借り上げた会社近くのマンションに泊まりこんで、朝6時半から深夜3時まで働きました。それでも仕事は全然終わらないんですよ」

   しかも自分ひとりが必死にがんばっても、何十億円もある会社の借金がどうにかなるわけではない。つぶれるときはつぶれるのが会社というものだ。いったい自分は何のために頑張っているのか、という徒労感があった。

   会社の外に出れば、入り口の近くにスーツを着た"いかついお兄さん"がいるのを目撃することもあった。金融関係の取り立て屋だったのだろう。入り口には「関係者以外の立ち入りを禁ずる。従わない場合は、警察に通報する」といった貼り紙が掲示されていたが、それで中にいる人間の不安が消えるわけではない。

   さらに、会社の倉庫に保管してあったコンピュータに「差押」の札が貼ってあるのを見たときには、精神的ダメージが倍増した。その差押物件の一部はいつのまにか行方不明に――聞けば、役員の1人が外部の会社に売ってしまったという。あきらかな横領、つまり犯罪なのだが、そんな行為も許されてしまう退廃的な空気が会社を支配していた。

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