「危機にぶつかったのは運がいい」不況でトヨタはどう考えるか

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   世界的な景気後退の動きが鮮明になり、経済ニュースは暗い話ばかりになりつつあるが、ピンチはチャンスという言葉もある。こんなとき"世界のトヨタ"はどう考えるのか。新書『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』(若松義人著)の中には、「トヨタ生産方式」を体系化した人物として知られる元副社長・大野耐一の、次のような言葉が紹介されている。

難局だからこそやりがいがある

   1973年のオイルショックは深刻だった。日本経済は戦後初めてマイナス成長となり、この年が高度経済成長の終わりとされる。そのとき、生産管理の責任者であるトヨタマンが、モノは入ってこない、車は売れないという八方ふさがりの状況に困り果て、妙案はないかと大野耐一氏を訪ね、「こんなときはどうしたらええもんでしょうか」と聞いた。

「バカ、そんなことは誰にもわかりゃせんよ。それより、おまえは運がいいよ。ちょうど生産管理の責任者をやっているときにこんな問題にぶつかったのは、運がいいと思わなあかん。局面を自分の力で乗り切る絶好のチャンスじゃないか。なんとしてでもやらんといかんぞ」

   オイルショックは誰も経験のない危機だった。解決策は自分で暗中模索するしかない。大野氏の発想は「危機はチャンスなり」で、難局だからこそやりがいがあると激励したのだった。大野氏はこうも言っている。

「私が思うには、たとえば一企業の中で、よく売れる部門を持たされるよりも、なかなか売れないで弱っているところと取り組んだほうが、それだけ差し迫った改善のニーズがあるだけに、やりがいがあるではないかと考えるのだ」

   困難が、いい発想のもとである。困っていない部門で改善のニーズを見つけるのは難しいが、困っている部門なら、課題がたくさんある。課題を通して未来の切り開き方がわかる。問題や課題は忌み嫌うものでなく、歓迎すべきものである。

若松義人『トヨタの上司は現場で何を伝えているのか』〔PHP新書 82~83頁〕より)

(会社ウォッチ編集者Kのひとこと)
本書は書名のとおり、日本を代表する企業、トヨタの現場で生まれた名言を一冊にまとめ、具体的なエピソードをまじえて紹介した本。「なぜを5回繰り返せ」「言われた通りにやるな」など、トップメーカーの現場に伝わるさまざまな格言が登場する。創業者の豊田喜一郎が「手を汚さんで仕事ができるか」と社員を一喝したエピソードには、最初はベンチャー企業だったトヨタの"開拓者精神"がうかがわれて興味深い。

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