自分に甘く、周りに迷惑をかけても何とも思わない「シュガー社員」。依存心が強いため、一緒に働く人々が疲弊するのが何ともやっかいです。前回はシュガー社員を「採用前」に見抜く方法を取り上げましたが、いくら採用段階で食い止めることができても、あることがきっかけで普通の若者の「スイッチ」がONになり、「シュガー社員」に大変身してしまうこともあるのです。
職場の環境次第で「スイッチ」がONになる
シュガー社員のような甘さは、誰でも持っているものです。「糖度ゼロ」の社員はむしろ少なめで、ほんのりした甘さだったのが、環境によって「激甘」もしくは「砂糖漬け」になってしまうケースもあるのです。
シュガー社員スイッチが入ってしまう環境。それは職場の環境にほかならないのですが、多くは、若手社員に仕事上の注意をしたときや仕事のミスが続いたときです。若手社員にしてみれば、だんだんと仕事がつまらなくなり、仕事の価値や意味、やりがいを今の職場で見出せなくなってきたときにスイッチが入ることが多いのです。
シュガー社員スイッチが入ると、どうなるか。
「言われたことしかやりません」
「残業はしません」
「これは自分の仕事ではありません」
と、会社に対して労働力を提供するという意識が一気に希薄になります。
いったんシュガー社員スイッチが入ってしまうと、スイッチをOFFにすることが非常に困難です。したがって会社としては、いかにスイッチを押さないようにするのかが重要になります。特に、一番スイッチの入りやすい「仕事の与え方」には工夫が必要です。
1.「だまって言われた通りにやって!」は禁句
言われた通りやればいい――。このような言い方は、「シュガー社員スイッチ」に直結しています。「指示待ち社員が多い」という話を耳にしますが、そう嘆く人は、これまでにそのようなやりとりがなかったか思い出してみて下さい。
若手社員は、与えられた仕事に「価値」や「意味」を見出そうとする傾向があります。これは決して悪いことではなく、向上心の表れでもあります。細切れの仕事を与えたときは、なおさら「この仕事の意味は?」と聞かれるかもしれません。
ところが「いいから、余計なこと考えないで言われたことだけやって」と言ってしまえば、「指導力のない上司」というレッテルを貼られ、「はいはい。言われたことだけやっていればいいんでしょ」と自分から動くことをしなくなります。
「何を聞いてもムダだ」「駒としか思われていない」と若手社員から思われてしまえば、どんなに指導しても効果があがりません。与える仕事に対する丁寧な説明が求められているのです。
2.「こんなことも分からないのか?」はスイッチの連打
かといって、何でもかんでも求められている質問に100点満点の答えを出していれば、依存心の強い若手社員ほど「何でも聞いちゃお」と考え、質問攻めに合ってしまいます。これでは本人の成長が見込めません。最初のうちは「わからないこと=即質問」でもいいのですが、仕事に慣れてきた頃を見計らって、「調べ方」を教えて下さい。
「あのファイル調べて」
「この言葉で検索してみて」
「○○さんが担当だから、直接聞いてみて」
質問を受けたときも「それはどこまで調べて質問してきているの?」と確認するようにします。「いい質問だね」と言われるくらい質問力が高まると、自立心もわいてきます。質問に対して「こんなことも分からないのか」と言ってしまえば、若手社員の繊細なハートは傷つき、シュガー社員ロードまっしぐらになってしまいます。
3.「多分大丈夫」は「どう大丈夫なの?」としつこく確認
上司から仕事の確認をされたとき、若手社員は曖昧な返事をしてしまうことがあります。そのときは「多分大丈夫です」を見逃さず、「どう大丈夫なの?」「ダメだったらどうするの?」と確認してください。
ビジネスの上で曖昧な返事をするということは、非常にリスキーということを伝えて下さい。わからないことは「確認しておきます」と返事が出せるくらい、根気よく指導しなければならないのです。
仕事が分からない、分からないからつまらない。そのようにして「シュガー社員スイッチ」が入ってしまうのです。もう今までと同じ教育方法は通用しないかもしれません。若手社員の価値観を理解した上で、接していかなければならないでしょう。
田北百樹子