ITをめぐるトラブルは社内に限りません。会社から家に帰ったあと、子供が起こした問題に悩まされることだってあるのです。たとえば、こんなケースがありました。
E子さんは、中学生の長男と二人で暮らしています。学習塾と課外のスポーツクラブに加えて、たまにE子さんの土日出勤もあり得るため、小学校の4年生に進級した頃から連絡用に携帯電話を持たせていました。
「あなた、エッチなサイトを見たでしょう?」
6年生に進級した夏休みのある日、朝から子供の元気がありません。勉強疲れか、課外のスポーツと塾と両方へ通うのが負担になっているのか、とE子さんは心配するのですが、塾のテストもちゃんとできているし、スポーツのほうでもトラブルがあるという話はありません。
「もしや」と思い、子供が眠りについてから携帯電話のメールをチェックしました。案の定、アダルトサイトを騙る架空請求メールが来ています。
「このメールを消去せず、気に病んでいるということは、実際にアダルトサイトにいったんだな……」
そう見破ったE子さんは、一計を案じました。一日おいた翌々日、起きてきた子供に言いました。
「あなた、エッチなサイトを見たでしょう?」
否定する子供にE子さんは、
「××××というエッチサイトの業者から料金を支払えってメールがお母さんのところにも来たのよ!」
子供のしつけは「万事塞翁が馬」
まさか、自分のメールをチェックされているとは夢にも思わない子供は、仲良しの友達と見たと、あっさり白状しました。学校は違うのですが、住んでいるところが近く、家族ぐるみで仲良くしている友達です。
よく聞けば、ただの無料アダルト画像サイトだったのですが、お灸をすえてやろうと思っていたE子さんは、
「昨日、その業者に4万8000円を払っておいたから。あなたと二人、苦しい家計のなかで4万8000円の出費が、どれほどお母さんの負担になるかわかってるの!」
きつく叱ると、子供はすすんで「もう二度としない、誓います」と謝ってきました。その日の昼休み、E子さんは友達のお母さんに電話をかけ、
「アダルトサイトの架空請求がありましたが、これを機会に躾けようと思うので、そちらのお子さんのほうで話題になることがあったら、本物の請求で、本当に支払ったということにしておいてください」
と頼みました。すると友達のお母さんも、
「じゃあ、ウチも相乗りしていいかしら? ○○ちゃんのお母さんが代わりに払ってくれたって、主人と一緒にお灸をすえてやるわ」
E子さんは言います。
「子供の躾けなんて、万事塞翁が馬みたいなことが多いんですよ。このケースでは、小さなトラブルを予防ワクチンのように使えたのですが、中学生になると子供も知恵をつけてくるから、そう簡単にはいかないでしょう。これからは、ネットや社会の現実をきちんと正面から教えていくことが、大きなトラブルに巻き込まれないための杖となると思います」
井上トシユキ