「定年までヒラ」それでも終身雇用がいいのか?

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   ここ2、3年ほど新卒採用における売り手市場が続いたせいで、学生はそれなりに就職先に満足しているようだ。「思っていたよりも満足している」と答えた人間は8割を超える(社会経済生産性本部・新入社員調査より)。つい5年前まで、就職氷河期という冬の時代が続き、ロストジェネレーションという不遇世代が続いたことなど、今の新人は忘れているのかもしれない。

   ただし、「内定先に満足している」=「人生全てが順風満帆」というわけではない。というのも、就職において入り口はあまり重要ではないのだ。

   ここ日本では、ほとんどの企業は相変わらず年功序列制度を維持している。確かに「ウチは成果主義ですよ、だから若者もチャンスがありますよ」とPRする企業は少なくない。だがそんな会社であっても、実際には新人は横並びの最低限の初任給からスタートし、社内には明らかに仕事をしていない管理職がゴロゴロしているという企業がほとんどだろう。それは本質的には年功序列だ。

   年功序列制度の本質とは、若い頃に働き貯めた年功に対するご褒美を、40歳以上の出世で受け取るというものだ。つまり、大切なのは報酬の受け取り手に回る20年後であり、入り口はあまり重要ではないということになる。

日本の年功序列制度は「機能不全」に陥っている

   では現時点で日本の年功序列制度は、どのくらい機能しているのか。40歳時点で、課長以上に昇格しているのはたった26%というデータがある(06年読売新聞調査)。要するに、よほど急成長が見込める企業ならイザ知らず、普通の会社では、いまさら入ったところで過半数の人間は生涯ヒラ、将棋で言えば"歩"なわけだ。はたしてこの事実に彼らは気づいているのだろうか。

   「別に出世はしなくていい」という人もいるとは思う。でも、こう考えてみるといい。序列はせいぜい係長、主任どまり。定昇も30代後半以降はたいてい頭打ちになるから、昇給も望み薄。もっとも忙しい30代半ばのまま、残りの人生を過ごすわけだ。こりゃ結構辛いと思う。

   歩で終わらないために何をすべきか。どういう仕事をしたいかを決め、そのために必要なキャリアを身につけ、場合によっては転職して勝ち取らないといけない。そのためには20代の過ごし方が非常に重要だ。

   「全然知らなかったよ!」と思った人は、今からでも遅くないので、自分のキャリアを見直してみるべきだろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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