「彼女に出会えなかったら、結婚していなかったかもしれない」
それでも交際は順調に続き、二人はめでたくゴールインした。智さんがフリーターと決別して会社勤めをしてから6年がたったころ。「今の仕事で生計を立てていける」という自信がついたからだ。
その間、特に劇的なエピソードがあったというわけではない。しかし、一つ一つの出来事の"つながり"をあとから振り返って考えると、運命的なものを感じないわけにはいかない。
6年前、フリーターをやめてグラフィックデザインの会社に入っていなければ、ひかりさんと出会うことはなかった。仕事の厳しさに負けて、途中で会社を辞めていれば、やっぱりひかりさんと出会うことはなかった。
ひかりさんは、智さんのこれまでの人生でほとんど唯一「気が合う」と思えた人。そのような人に出会うチャンスは、あのとき、あの場所にいなければ訪れなかったのだ。
「数少ないチャンスの中で、そういう人に出会えたのは運命だったのかと思います。もし彼女に出会えなかったら、僕は結婚していなかったかもしれないのですから」