サブプライム問題に端を発する世界的景気後退のあおりで、日本中で非正規雇用がクビを切られまくっている。一時は「期間工の労組加入も」なんて言っていたトヨタも、そんなセリフは忘れたとばかりに2000人を超す期間工をリストラしている。
といっても、こればかりはどうしようもない。というのも彼ら非正規雇用労働者はそのために存在しているのだから。よく誤解されていることではあるが、「年功序列、終身雇用」というのは、日本型雇用の“陽”の部分だけをとらえたものだ。それを支えるために、非正規雇用という“暗”の部分が作り出され、利用されている。
非正規雇用というのは、企業にとっては雇用の調整ツールでしかない。「全員正社員でいいじゃないか」というトンチンカンな意見を言う人も稀にいるが、それが可能だった時代は20年近く昔に終わっている。
ちなみに、いつでも切り捨て可能なように、どんなに優秀であろうが熱心であろうが、非正規雇用労働者にはできるだけ単純でマニュアル化された業務しか割り当てられない。経験を積ませ戦力として育てても、いざという時は切り捨てるのだからもったいない。そういう貴重な仕事は、できるだけ正社員に割り当てられる。
だから、転職市場においては、非正規雇用はなかなか職歴とは認められないことになる。正社員と非正規雇用という階層が固定化されているのはこれが理由だ。
正社員の「クビ切り」も認めるべきだ
対策としては、正社員の雇用規制も緩和し、賃下げ、できれば一定のクビ切りも認めるしかない。それにより、企業側はもう非正規の側にだけ“つまらない仕事”を押し付けたり、クビを切る必要はなくなるのだ。いわば「皆で痛みを分かち合う」ということになる。
本来なら、バブル崩壊後の90年代、こういった雇用改革が行われるべきだった。そうすれば、ロストジェネレーション問題など起きてはいなかっただろう。「失われた十年」とは、人事的には彼らの失われた20代のことだ。
今からでも遅くはない。同じ過ちを繰り返さないためにも、規制緩和による雇用の流動化を進めるべきだ。
ところで、左派や連合は景気の良い時には「労働者は連帯しよう!」だの「正社員と非正規の間に対立はない!」だのと言っているが、こういう状況ではなぜか「私たちの分を減らしてあなた方を救いましょうね」とは言わない。こういうのを二枚舌、あるいはやらずぼったくりという。
城 繁幸