「会いたいと思った人には必ず会いに行く」
そんな西田が、農業コンサルタントの三輪晋と意気投合してできたのがセレン。私が社長秘書を勤めている農業支援ベンチャーだ。これまでカネとヒトにかかわる仕事しかしてこなかった西田が農業支援の会社に携わるなんて誰も想像できなかったことだろう。
そもそもはじまりは今年の5月上旬の飲みの席。赤坂にある馴染みの小料理屋で会社帰りに西田と私は、鹿児島の芋焼酎を飲みながら煮物をつまみに、ソフィアの合言葉や元気の伝播について話をしていた。
「元気って聞くと思い出す人がいるんですよ」
私は三輪の話をした――「土ごと発酵」という農地改良をしていて野菜を元気にしている人なんですよ。「元気な野菜は元気な農家がいないとできないから、『人ごと発酵』も大事なんだ」と話しているんですよ――
西田は身体を前のめりさせながら、いつもより真剣な目で私の話を食い入るように聞いていた。
「いや~深いねえ。その人どこにいるの? 宮崎? 会いに行こうよ! 人を元気にするのも野菜を元気にするのも何か共通項があるはずだよ!」
えっ?東京から宮崎に会いに行くの? キョトンとする私にかまわず、西田は言った。
「僕は今まで会いたいと思ったら必ず会いに行くんだ。確かめなきゃ気がすまないからね」
約10日後、私たちは実際に宮崎に飛んで、三輪に会った。顔あわせをした瞬間、二人の頭には電流が走ったようだ。
三輪が実践してきた「土ごと発酵」「人ごと発酵」と西田の目指すものはとても近かった。野菜を元気にすれば、人も元気になる。話は弾み、一緒に事業をやろうということになった。それからは10月のセレン設立まで、嵐のようなスピードで物事が進んでいった。