若手は「結果」ではなく「行動」を評価するといい
『上司のための戦略的ほめ方・叱り方』(宝島社新書)の著者である石田淳氏は、渡辺監督の手法は“行動科学マネジメント”の視点から見て、非常に理にかなっていると指摘する。
「人間には“自分のとった行動をホメられると、その行動を自発的に繰り返す”という行動原則があります。ある目的達成のために望ましい行動をしたときには、その行動をホメることで、よい結果につながるのです」
たとえば渡辺監督は、選手のエラーが失点につながっても「あれは勝負にいったプレーだから」と責めなかった。
「成長過程にある若手選手は、よい結果だけを評価されても、それを再現することができません。渡辺監督は結果だけにとらわれず、よい行動をホメたのだと思います。ホメられた行動を反復すれば、それを再現できる実力が付き、結果が出るようになるのです。“次は取り返す”というモチベーションの向上にもつながります」
また、結果を評価するときには、客観的な数字をうまく使うことがよいという。渡辺監督が交流戦の後に「昨年は9勝15敗だったんだろ」と勝敗数を持ち出したのも、理にかなっているというわけだ。
「交流戦全体では負け越しでも、去年の9勝より今年の10勝の方が、わずかですが確かに成長している。これは慰めではなく事実です。反省や叱責にばかり意識がいくと、成長の事実を見落としてしまいます」
しかし、最近の若いモンを見ると、ついつい「なぜできない!」「やる気あるのか?」と言いたくなるところ。自分もそうやって育ってきたという意識もある。だが、石田氏は厳しく指摘する。
「世の中は変わったんです。社会が豊かになり価値観が多様化する中では、かつてのような精神論だけでは人は動きません。いまどきの若者には、人格と行動を明確に分けて“よい行動”をホメる方が成長させやすいのです」