サラリーマンに向くか、向かないか。それを考えるキーワードの1つに「安定志向」がある。会社や仕事に対して何を求めるか、そこをちょっと考えてみよう。
やっぱり、みんな「安定志向」?
会社では年々、非正社員の数が増え、数字の上では雇用者全体の3割を超えている。しかし、派遣や契約で働き続けることにはデメリットも多いため、正社員を希望する人が以前よりも増えているようだ。
「転職するとしたら、どの雇用形態で働きたいですか?」。エンジャパンの転職サイト「[en]転職コンサルタント」が登録会員に対してこのようなアンケートを実施したところ、男性の9割、女性でも8割の人が「正社員」と回答した。一方、独立して自営やSOHOで仕事をしたいという人は、男女ともに3%にすぎなかった。
「正社員」と答えた人の理由を見ると、
「継続することにより保証がついてくるから」
「安定した仕事、長期的に関われる仕事を持ちたい」
「正社員以外は、経営が悪化するとすぐに解雇されるため」
など、安定性を正社員の魅力としてあげている人が多い。それは裏を返すと、非正社員への不安の表れといえるだろう。
就職活動中の大学生や第2新卒を対象にした別の調査を見ても、「大手企業で定年まで働きたい」という安定志向にシフトしている。収入や生活の安定を第一に求めることは、当然のことなのかもしれない。
安定志向は、決して悪いことではない。自己保存本能が正常に働いているという証かも知れない。収入の安定を確保してこそ仕事に集中できる、というのももっともなことだ。扶養家族を抱えていたら、なおさらのことだと思う。
サラリーマンを志向しないタイプの考え方
これに反して、サラリーマンを志向しないタイプはどう考えるかというと「安定」という2文字が、最優先事項にはならない。安全を確保された環境に、魅力を感じないのだ。少々刺激がある方が、生きている実感がある。人に与えられるより、自分で創り上げていく方に喜びを感じる。先が見えないからこそ面白く、やる気がわいてくる。だから、安定より自由度の高い環境を求めてしまう。
会社を飛び出して独立したいと思っても、スグに行動に移す人となかなかできない人がいる。その違いは、その人の志向性や価値観、つまり「何を失いたくないと思っているか」が大きく関わっているように思う。不安が先立ってしまう人にとって、会社に属さない生き方はリスクの塊(かたまり)にしか見えないだろう。
雇われない生き方を選択する人には、冒険心やチャレンジ精神が旺盛な人が多い。他人から「なんで苦労を買うようなことを好んでやるのか」と思われても、本人にとっては、苦でもなんでもない。アドベンチャーにワクワクするタイプにとっては、挑戦や変化のない仕事は、退屈なものでしかない。
こうした志向性の違いは、人それぞれの個性ということになるだろう。最近は脳科学が進んで、人の性格が科学的に解明されるようになった。冒険を好んだり(新奇探索傾向)、不安を感じて慎重になったり(不安傾向)という性向は、特定の遺伝子により先天的に決定づけられているということだ。前回のコラムで紹介した「自営の親を持つと独立の道を選択しやすくなる」という傾向は、遺伝子の影響としても説明することができそうだ。
「自分は会社に向かないタイプかも……。では、独立に向く?」と悩んでいる方は、生活の安定とチャレンジする自由のどちらが自分にとって大切かを考えることで、その答えが見えてくるかもしれない。ただし、安易に独立をお勧めするわけではない。その理由は、次回以降でお話したいと思う。
塚田 祐子