サラリーマンを志向しないタイプの考え方
これに反して、サラリーマンを志向しないタイプはどう考えるかというと「安定」という2文字が、最優先事項にはならない。安全を確保された環境に、魅力を感じないのだ。少々刺激がある方が、生きている実感がある。人に与えられるより、自分で創り上げていく方に喜びを感じる。先が見えないからこそ面白く、やる気がわいてくる。だから、安定より自由度の高い環境を求めてしまう。
会社を飛び出して独立したいと思っても、スグに行動に移す人となかなかできない人がいる。その違いは、その人の志向性や価値観、つまり「何を失いたくないと思っているか」が大きく関わっているように思う。不安が先立ってしまう人にとって、会社に属さない生き方はリスクの塊(かたまり)にしか見えないだろう。
雇われない生き方を選択する人には、冒険心やチャレンジ精神が旺盛な人が多い。他人から「なんで苦労を買うようなことを好んでやるのか」と思われても、本人にとっては、苦でもなんでもない。アドベンチャーにワクワクするタイプにとっては、挑戦や変化のない仕事は、退屈なものでしかない。
こうした志向性の違いは、人それぞれの個性ということになるだろう。最近は脳科学が進んで、人の性格が科学的に解明されるようになった。冒険を好んだり(新奇探索傾向)、不安を感じて慎重になったり(不安傾向)という性向は、特定の遺伝子により先天的に決定づけられているということだ。前回のコラムで紹介した「自営の親を持つと独立の道を選択しやすくなる」という傾向は、遺伝子の影響としても説明することができそうだ。
「自分は会社に向かないタイプかも……。では、独立に向く?」と悩んでいる方は、生活の安定とチャレンジする自由のどちらが自分にとって大切かを考えることで、その答えが見えてくるかもしれない。ただし、安易に独立をお勧めするわけではない。その理由は、次回以降でお話したいと思う。
塚田 祐子