生姜がブームである。2008年の秋冬には、さまざまな食品会社から10種類以上の「生姜商品」の新発売が予定されている。そんな「生姜ブーム」の火付け役となった永谷園は、「生姜部」を作って素材の研究に努めている。
「永谷園生姜部」の社員が実際に調理
生姜料理って、どのくらいあるんだろう――。「生姜レシピ129」は、そんな疑問から出発した企画だ。レシピは「永谷園生姜部」の15名のメンバーが、料理研究家の協力を得て考えた。実際の調理もメンバー全員が行い、動画をすべてウェブサイトに公開している。その数、実に129種類。
「生姜レシピ129」は「ぜんぶ生姜、ぜんぶ動画」だ
人気レシピの第1位は「えびしょうがチリソース」、第2位は「ほうれん草としょうがの簡単カレー」。「薄切りアスパラガスのしょうがしょうゆ炒め」「いかとしょうがの甘辛煮」などもおいしそうだ。
料理が得意な女性部員だけでなく、若手の男性社員や生姜部顧問の専務も同じように包丁やフライパンと格闘している。生姜は体をぽかぽか温める食べ物として古くから知られている。寒い日の晩ごはんに迷ったら覗いてみたいサイトだ。
生姜の栽培も行う「生姜部」の活動
「生姜おこげ」を手にする山田さんも生姜部メンバーだ
「永谷園生姜部」とは、社内の「部署」ではなく、野球部のような「クラブ」として位置づけられている。きっかけは、カップスープ『「冷え知らず」さんの生姜シリーズ』のヒットだ。商品開発の担当者を中心に「生姜についてもっと深く知りたい」「自分が体験して分かったことを発信したい」と考える各部署の「生姜担当者」が自発的に集まった。
「生姜部ブログ」には、生姜部のメンバーが千葉県の畑で生姜の栽培をしている様子が公開されている。土を耕し、種生姜を植え、雑草を取り除く。10月末には収穫祭を開いた。
メンバーの普段の職場は別々だが、雑草抜きや土いじりは、同じ畑で協力しながら作業をする。その中で「生姜っていい匂いだね」「こんな味の生姜商品はどうだろう?」といった会話が自然に生まれ、新しい商品開発や改善につながる“気づき”が生まれているという。
メンバーは生姜にかなり詳しくなった。共通の基盤があるので、対等な関係で意見を言い合えるし、意思決定もスピーディだ。「メンバー同士が仲良くなれるし、みんなでやる土いじりは楽しいんです」(広報室の山田友紀子さん)。組織横断的な活動は、いろいろな効果を生んでいるようだ。
「見て、さわって、育てて、しっかり味わう事を大切に」
「お茶づけ海苔」で有名な永谷園だが、即席食品メーカーとして年間に扱う品種は230にものぼる。「あさげ」などの即席みそ汁や、「おとなのふりかけ」「松茸の味お吸いもの」「すし太郎」に、「麻婆春雨」「チャーハンの素」「ミックス天お好み焼き」「煮込みラーメン」などラインナップは幅広い。伝統の会社というイメージがあるが、アイデアを重視する開発型企業でもある。
ウェブサイトには「生姜部の使命」が掲げられている。そこには「部員ひとりひとりが実際に見て、さわって、育てて、しっかり味わう事を大切に」とある。
自社の商品に関わる素材を深く研究し、社内のコミュニケーションを活発にしながら、その成果を社外に積極的に公表している「永谷園生姜部」。消費者が安心し、共感できる商品イメージを高めるウェブサイトのよい例だろう。
株式会社永谷園
緑茶の開祖、永谷宗七郎の子孫が明治38年に東京でお茶屋を開業。1953年に株式会社永谷園本舗を設立し、「お茶づけ海苔」販売開始。1992年に社名変更。
■ウェブサイト拝見
企業がウェブサイトで自社の製品やサービスをPRするのが当たり前の時代。サイトの良し悪しが広報戦略の成否を決める。ほかとは一味違う魅力的なサイトはどんな観点で作られているのか。そのポイントを探る。