電子部品メーカー「出退勤システム」の思わぬ誤算

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間違いのたびにPCデータを「修正」しなくてはいけない

   ところが、トラブルはすぐにやってきました。

   A社の工場は3交代のシフトで稼働していました。一度に300人ほどが出入りするのですが、各シフトで働く人たちが工場に来る時間はほとんど同じでも、仕事を終えた人たちが帰るタイミングはバラバラです。

   実は、これまでにもよくあったことではあるのですが、タイムレコーダについている「出勤」と「退勤」のボタンを切り替えず、間違えたままで打刻してしまうケースが後を絶たなかったのです。特に、帰りの人たちが、ボタンが「出勤」の位置にあるままで「退勤」の打刻をしてしまうことが頻発しました。

   これまでなら、ガードマンのところに常備されていたホワイトで塗りつぶし、「出勤」と「退勤」のボタンを正しく切り替えて打ち直すだけですみました。

   しかし、システム化されてしまっているため、間違いが起こるたびに管理部門の部屋にあるPCのデータを修正しなくてはなりません。それでも昼間なら、内線で連絡して修正を依頼すれば、手間がかかるとはいえ、社内だけでなんとかなります。

   困るのは日付が変わる深夜の時間帯です。

   ガードマンは警備の業務しかしてくれませんから、いちいち管理会社に自分で連絡しなくてはなりません。当該企業の社員であるとの認証を受け、すでに集計が始まっている前日データを呼び出してもらい、修正してもらうのに軽く20~30分はかかってしまいます。

   出勤の人が打ち間違えてしまい、工場の仕事そのものが回らなくなることさえありました。

井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。TBSラジオ「アクセス」 毎週木曜担当。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社刊)「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文芸春秋社 刊)など。
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